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・「恐怖劇場 ママがこわい」 楳図かずお(1999、小学館)

Umezu
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コンビニコミック。夏だし、楳図作品が次々映画化されるということでの重版か。
「ママがこわい」、「蛇」、「ねがい」を収録。

実は私、楳図作品ってほとんど読んだことがないんだよね……。
だって恐いから!!(笑)
日野日出志作品を、少年時代に「あまりの怖さに捨てた」という人の話をたまに聞くが、楳図かずおもまた、あまりにもあまりにも恐くて、ちょっとエンターテインメントとして楽しめなかったんだよね。子供時代。
しかしあらためて読んでみると、楳図かずおというのは天才なんだなということがわかりますね。

・「ママがこわい」
病院に入院していたママが、いつの間にか蛇女に入れ替わっていた。娘の弓子だけが、その正体を知っている……。

病院に入院している蛇女(らしき女性)が、飢えから弓子の教科書のカエルが載っている部分を破いて持っていってしまうという恐ろしいシチュエーションからの、怒涛の展開。
弓子は退院した母親に疑惑を持つが、祖母と父には信じてもらえない。
楳図作品には、このように「自分の主張を信じてもらえない孤独と恐怖」がよく描かれるように感じられる。
それは、大人とは別の価値観で生きている子供の孤独でもある。

・「蛇」
近所の屋敷で大きな蛇を飼っている、と聞きその家に忍び込んだ子供たちは、あやまってその蛇を逃がしてしまう。
罪悪感にかられた田代少年が一人留守番していると、そこに父親の再婚相手の女性が尋ねてくるのだが……。

いたずらをした後に、それがきっかけで大事になってしまうが言い出せない。しかし罪悪感と恐怖だけはつのってくる……という子供らしい感情を描いている。
ひとつひとつのシークエンスのつながりが微妙に不連続になっていて、すべてが少年の幻想だったかのようにも思える描き方は「うまい!」というほかない。

・「ねがい」
友達のいない少年・等は、学校帰りに人間の頭部にも似た木のくずを拾ってくる。彼はそれをもとに等身大の人形をつくり、それを「モクメ」と名づける。
そして「モクメ」が、人間のように動き出すよう、願いをかけるのだが……。

「ドラえもん」を筆頭に、藤子不二雄が描く「異世界からの友人との別れ」は、少年とその友人との間柄とは関係ない外部的な要因が主流であるように感じる。
あるいは、「別れの理由」というのは、藤子不二雄にとってはあまり重要ではないのかもしれない。
本作では、「別れ」の理由ははっきりしている。
少年自身が、異世界の友人を必要としなくなるのだ。少年自らが、別れのシチュエーションをつくり出すのである。

一読、うなってしまった。少年ゆえの孤独、悲しみ、喜び、残酷性、しかも決して忌避できない残酷性をこのように描けるとは。
検索してみると、楳図ファンの間でも人気エピソードであるらしく、映画化もされているし、モクメの携帯ストラップなんかもあるらしい。
ここに描かれていることは、少年時代にだれもが感じて、傷ついて、でも大人になると消えてしまう感情であるように思う。
それをマンガにできるっていうのは、まあ私なんぞが今さら言うのもナンだが、すごいことであるなあ(詠嘆)。


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