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・「成りあがり 矢沢永吉物語」 原作:矢沢永吉、漫画:きたがわ翔(2008、角川書店)

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コミックチャージ連載。あまりに有名な矢沢永吉の「成りあがり」をマンガ化。

本作はいっぷう変わった構成を取っている。生活に今ひとつ張り合いを感じられない営業マン・内田(29歳)が、父親の突然の死を体験して自分の人生を見つめなおすようになる。
彼は、永ちゃんと同世代で大の永ちゃんファンだった父親の人生を振り返りながら、「成りあがり」を読み進めていく。

要するに、「成りあがり」インタビュー当時の永ちゃん(28歳)、永ちゃんと同時代を「普通の男、普通の父親」として生きた内田青年の父親、そして現在29歳の内田、という三者を通して、「夢に生きるって何だ?」という問いかけをしていくことになると思う。

問題は、果たしてそんな難問に着地点が用意されているのかということだ。

当然だが「表現者」として生き、なおかつ金銭的に裕福になれるのはごく一部の人間である。
永ちゃんの人生は、「表現者」と「金銭的成功者」という二つの側面からリスペクトされてきた。元来、それらが混然となって評価されてきたからこそ、永ちゃんのカリスマがあると自分は考えている。
この第1巻では、どうも「表現者」と「成功者」の部分を二つに分けているように思える。そんなことをして大丈夫だろうか……?

もうひとつ言えるのは、原作の「成りあがり」が刊行された70年代後半から80年代前半あたりまでは、少なくとも今よりは世の中、閉塞していなかったということである。
80年代初頭、ドラマ「金八先生」(第2シリーズ)で、金八先生が中卒の少年たちの就職の面倒をみるにあたり、中卒でがんばっているおやっさんのところへ連れて行って元気づけるシーンがある。
学歴はないがさまざまな資格を取りまくっているおやっさん(何の職業かは忘れた)に会い、少年は鼓舞される。これは、決して現実にありえないシーンではなかった。そういう人は実際にいただろう。

80年代は、むろん「大卒」の威光もすごかったが、「学歴がない」からといって、まったくどうしようもないということもなかった時代だった。
現在は違うらしい。一面では昔よりシビアなのだ。

たぶん、普通にコミカライズしただけでも「成りあがり」なら一定の人気は見込めただろう。それを、わざわざ主人公を現代に生きる三十代目前の青年にしたということは、単に雑誌の読者対象に年齢や境遇を合わせたというだけにとどまらない。
「成りあがり」という一種のバイブルを、現代版に再解釈するということである。

この難問に今後、本作は答えてくれるだろうか?

補足

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