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【ポエム】・「道路とロードは紙一重」

その町の家は、なんかひとまわり小さかった。
それと、屋根の色が原色。
家と家の間が、妙に開いていた。

家には必ず小さい庭が付いていて、
その庭にはすべて人工芝が植えられている。

犬を飼っている家もあったが、
犬の等身大の人形を飾ってある家の方が多かった。

家の中をのぞくと、ほとんどの場合、主婦と思われる女性がテレビを観ながら美容体操をしていた。
レオタードに、レッグウォーマーを付けていた。

「美容体操のテレビを観ながら、美容体操をしているのかな」と思うが、
テレビに映っているものを観ると、ろくろがただクルクル回転しているだけだった。

路上は、ソフトをかぶった紳士がよく通る。
セールスマンらしい。
だれもがアタッシェ・ケースを持っていた。

ある紳士の一人が、ケースの中身をぶちまけてしまった。

中には、小さい、つくりの荒いゴム製の恐竜人形がいっぱい詰まっていた。

なぜか、子供を見かけることはなかった。

おかしいと思いつつ、町のはずれに行くとサーカスのテントがある。
入場無料だというので入ってみると、
客席は子供たちで満員。
全員が舞台に向かって、すごい勢いで声援を送っている。

舞台に何があるのかと思い観てみると、
やはりただろくろが回転しているだけだった。

サーカスを出ると、もう夕暮れ時。
子供たちは家に帰らないのだろうか? そろそろ夕飯の支度が始まる時間なんだが……。

と思い、もう一度サーカスの中に入ってみると、
ホストみたいな男たちが、夢中になって舞台上のろくろに声援を送る子供たちに、
弁当を配っていた。

「どんなものが入っているのだろう」と思い、子供の一人が弁当のフタを取るところを覗き込むと、

一人の子供の弁当の中には方位磁石、
別の子供の弁当の中には小さな英和辞典、
また別の子供の弁当の中には、マトリョーシカが入っていた。

それを眺めている間に、いつの間にか風景が変わり、

私は何もない、だだっぴろい草原にいた。

いや、何もないわけではない。遠くの方に古い駅舎があった。

近づいていくと、初老の、背筋のピンと伸びた車掌のような男性がいて、

いきなりズボンを脱ぎだすと銀色のふんどしをしており、ふんどしの前方から虹色のビームが発射。それが空にある、気持ち悪い顔の描かれた太陽を直撃し、太陽がまっぷたつに割れたところから無数のポチョムキン人間3号が飛び出し、光にあたったそばから消えていった。私はそば屋に入った。そば屋の中は、ホルマリンのにおいで充満しており、思わず鼻をおさえた。そうしたら先客のカップルが、聞こえるように「わかってないやつが来たね~」と言ったので、私はいつの間にか右手に握られていた銀玉鉄砲をカップルの男の方の額に向け、ひきがねをひいた。すると思いがけぬ強い反動とともに弾丸が発射され、男の頭を打ち抜いた。女の方は何事もなかったかのように、携帯電話の分厚いマニュアルを読んでいた。頼んでもいないそばが届く。私はそれをひと口すすった。

うまい! 思わず声に出して叫ぶと、前方にあった巨人像が音を立ててくずれた。するとそこは巨大な庭で、近所にある芸大の学生が、学園祭で展示したオブジェを次々と捨てに来るのだった。ヒマそうなオヤジがワンカップを飲みながらしばらくそれを眺めていたが、ふいに苦しみだすとドロドロととけていった。学生たちはそれを気にする様子もなく、どんどんオブジェを捨てていく。「キャンプファイヤーしようよ!」黒縁のめがねをかけた小太りな女が提案すると、学生たちはお互いにうなずきあい、いかにもいいアイディアだというようなことを口々に言ったかと思うと、その黒縁めがねをかけた小太りの女を、手に持ったスポーツチャンバラの竹刀でこづきはじめた。するとまた音を立てて、ビデオを逆再生するように岩がもとどおりの巨人像をかたちづくるためにくっつき出し、学生たちは全員おしつぶされた様子であった。

しかし、時計の中に隠れた子ヤギだけは生き残っていた。この光景は彼にトラウマを与え、その後の人生でも苦しみ続ける。おかげで子ヤギは、成長したら大人のヤギになってしまった。ヤギは、一定の長さの鉄の板を溶かして棒状にするための工作機械を買うために無理なローンを組んだ。しかし、その工作機械は届かなかった。代わりに届いたのは、メロンのにおいのする消しゴム一個だった。その消しゴムは、こう言った。「スクランブル交差点って、人がぶつからないで交差するからすごい!」でもだれも聞いていなかった。人類は滅びていたから。ささくれによって。ささくれが痛くて。そして何となくイライラして。兄貴の部屋の、F1のポスターをやぶいてしまったから。

さあ、物語もそろそろ終わりに近づいた。ヘンゼルとグレーテルは、知らない親戚のおじさんと同居することになった。おじさんも、こんな生活が長くは続かないことをわかっていた。おじさんはもはや、空虚であり、全であった。光のパワーを一身に浴びて、今、高層ビルから飛びおりんとしている。彼の観ている希望は間違いなく幻覚だっただがヘンゼルとグレーテルは、それが言い出せなかった。だれが言い出せる!? おじさんの苦しみをいちばんわかっているのは美空ひばりだったじゃないか。「スライド書棚」……この言葉に秘められた暗号を、だれが解けた? 解けたのは、進学塾に通う生意気なあの少年だけだったし、その彼もまた、シャッターの閉まった商店街と開いている商店街のギャップで死んでしまったじゃないか。文庫本だけが本じゃない、って言ってくれたのは豆腐屋のおばちゃんだった。でも豆腐屋はもうないよ。

本当に終わりが近づいたのでこれだけは言っておきたい。豆腐屋はもうないよ! ショッピングモールにあんなに反対していたマサイ族のケンさんも、グリーンランドに帰ってしまった。今、自分の友人と言えるのはダンボールでつくったイカだけだ。いや、ダンボールでつくられたものは、正確にはイカではない。イカのレプリカにすぎない。それを知ったときには、すべてが遅かった。大豆をいっぱいに入れた水槽を持ち去ったのはだれだ? おまえか? あなたか? それとも……。

やつは言っていた、「ロシアに、江戸情緒は、ないっちゃあないね。」そういうものなのか、とおれは思った。ロシアだから江戸はない、っていうこともないんじゃないか? おれは気軽に言ってしまった。やつのジーンズがやぶれていることにも気づかずに……。でも交番のおまわりさんは、電車賃がないと言ったらサロンパスを三枚、貸してくれた。おれは魔法のじゅうたんの要領で、それに乗って家に帰った。

家では、家族全員で何もうつってないテレビを観てたっけ。そういう一家なのだ。ユーモア一家。ユーモア一家? ヘドが出る! 電柱にのぼっているやつ、だれか、弓矢で打ち落とせよ! 法律に違反してないのか? 消防署は何をしてるんだ! だからブルドーザーのプラモデルをつくっている場合じゃない!!

冷やし中華に生命の存在が確認されたのは、ついこの間。バイキング一号が発見した。しかし、帰ってくる途中で、中学時代の友達にバッタリあって、そのまま飲みに行ってしまった。だれが。わからない。わかるはずもない。

そして、宇宙はすべて閉ざされ、完璧に「静かな」状態になった。招き猫の貯金箱。電動歯ブラシ。おれは、メモ帳をちぎって小さくたたみ、かっこよく路上の木の又にはさんで、

心の中でウインク。
(完)

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