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【雑記】・「ばあさんが 盗みで捕まり ぼけたフリ」 

ビートたけしがテレビ界に打って出たときのいちばんの売りは「老人をネタにしたギャグ」だった。しかし、今となってはそれを覚えている人はほとんどいないかも。
たけしの「標語」でいちばん有名になったのが「赤信号 みんなで渡れば 恐くない」で、他の年寄りネタはほとんど忘れ去られてしまった。私も忘れた。

さて、80年代の「老人を虐待するかのようなネタ」にどのような意味があったかというと、「タブーを審判するスリル」以上のものはなかったように思う。サブカル全般に広めれば、「天皇」とかをネタにするのと文脈は同じだったのではないか。

で、以上は話の枕。

最近、まったく偶然かもしれないけど、若者の年金負担やワーキングプアなどの文脈から、「老人でムダに生きているようなやつらはとっとと死んだ方がいい」というような意見を散見するようになった。

しかし、よくそんなことが言えるなと思う。そういう人は、自分が社会に貢献できない老人になったら、自殺したりできんのかなー。それとも一生、そんなことはありえないと思っているんだろうか。

安心してトシを取れない社会など、どうせ何やったってダメに決まってると、私は思うけどね。

私は、昨今の若年層のワーキングプア問題についてはよく知らないですよ。
しかし、「能力や社会にかける負担によって、その人間が生きるべきか死ぬべきかを問う」ということは、そういう社会・経済の動向を超えて、「生きること」の価値観の変革をせまるものである、ということを、軽口を叩いている人には自覚してもらいたい。

あるいはまた、ちょっと先走った話になるが、もしも「自分は年老いて、社会で能力を発揮できなくなったので、やりたいこともやってきたし、死にます」という理由での自殺者が出てきたとき、

これは、旧来の死生観に対する挑戦であるわけなのである。

神なき時代、「あの世」など信じられぬ時代に、ある程度の知的レベルの人間にこういうことをやられたら、かなりまずい状況になると思う。
(まあ、まずいと思うのは私だけかもしれないけどね。いったん死んじゃったら、後悔するかもしれない当人はすでにこの世にいないわけだから。)

にしても、私自身はそういう理念的な自殺は、理念的であるがゆえに胡散臭いと思う。

まあ、いくら私が胡散臭いと思っても、一度死んだ人間は前にも書いたように「だまされた。死ななきゃよかった」とは思わないものなのである。
そこが、「結婚しておけばよかった!」と読者から文句を言われたという「クロワッサン症候群」などとは違うところである。

それにしても、社会評論の分野から戦争だの、老人は死ねだのという意見が出てくるのはぶっそうな時代になった。
が、少なくとも一億層中流の考えからのパラダイム変換は起こっているような気がしていて、

そういう流れに真っ先に取り残されるのは、バブル時代を体験していて、消費行動だけは定型化してしまい、なおかつ会社内ではオジャマ虫(死語)扱いとなっている窓際の三十代後半から四十代だったりするので、

そういう人は今から、下の世代のつきあげに対して理論武装しておいた方がいいかもしれない。

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