・「恐怖! マリア学園の地下室に……」 浅井まさのぶ(1980、立風書房)
少女向け恐怖・怪奇マンガを多く出していたレーベル「レモンコミックス」の1冊。
厳格な全寮制の女子高・マリア学園に入学してきた生徒たち。顔のアザにコンプレックスのある生徒・君枝が朝礼で倒れ、そのまま重病に。そして、その後飛び降り自殺してしまう。
君枝が倒れてから、彼女の幻を観たというものが続出。死の責任を取らされて医務の先生はクビに。代わりに雇われた青山先生がやってきてから、学園はさらなる怪異に襲われることに……。
君枝の親友・桂子は、怪異の真相をつきとめるためにいろいろと探り始めるのだが……。
ネットで検索したら、まともな論評がほとんどなかったので書いてみる。
結論から言うと、佳作であると私は思う。
(以下、ネタバレあり。)
最初の怪異「君枝の幽霊」から、悪霊の存在のほのめかし、そして「人間の恨みを背負って出現する虫」の存在をお菊の恨みの表れだとする「お菊虫」、そして実盛の「実盛虫」という事例で説得力をもたせ、真相である「修道院の謎」にせまっていくという過程は、かなりよくできている。
(まあ、元ネタがなければ、だけど。私の知識不足でわからん。)
とくに、本作では「幽霊」というかたちのないものと「虫」というかたちのあるものとの気味の悪さが融合しているところに面白味がある。幽霊の怪異が幻であったとしても、謎の「虫」が大発生しているという事実が残り、さらにはそれが死者の怨念を背負って出現している、というふうに何重にもひねりがきいているのだ。
惜しむらくは、恐怖の導入部で使われた「君枝」の存在が最後まで導入だけで終わってしまっている。ラスト、悪霊に取り込まれた君枝の霊(あるいは悪霊が見せた幻?)が出てくるが、そこに桂子との因縁がまったくない。
これが、たとえばもともとの「マリア学園」の謎に、桂子と君枝の関係性がのっかっているという二重構造になっていれば、本作は佳作から傑作になっていただろう。たとえば親友ぶっていたとしても、桂子は君枝をどこかバカにしていてそれを君枝が恨んでいたとかね。たとえばの話。
実際のところ、そういう話はホラーものにもけっこうありますし。
本作は今でも古書店では目につき、値段も安い。浅井まさのぶはもともと少年マンガ畑の人だと思うが、70年代から80年代のマンガ界全体のレベルを支えてきた存在であり、あんまりないがしろにしちゃいかんよ。
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