【映画】・「アフタースクール」
監督:内田けんじ
臨月の女性を放置して失踪したサラリーマン。彼の中学時代の同級生で今でもつきあいのある中学教師は、探偵から失踪した男のいどころをつきとめることに協力させられる。
男の失踪の目的は。探偵はだれのために彼を探しているのか?
いやこれは参った。これは傑作。
(以下、ネタバレ全開で。これから観ようと思う人は、絶対に読まないように。)
本作のキモは、探偵も、観客も、「まさか自分に何の利益も無い善行を行う人間はいないだろう」と思わせることがミスディレクションになっているということだ。
主人公が行っているのは、自分にとってはあたりまえの善行であり、そうおかしなことではない。しかし、プロットそのものをミステリ仕立てに見せることによって、まさにその「あたりまえのこと」が謎になっている。これはまさしく、現代日本で「善行」をフィクションの世界ですら素直に描けないことを表している。
観客の我々にとっては、「地下カジノで借金を背負い、そのために汚い仕事を請け負う探偵」に対しては圧倒的にリアリティを感じるが、「自分の善行のために生きる男」には、「ミステリ」という倒立したルートをたどってでしか到達することができない。
この面白さ、そして哀しさ。
それは、中学教師と探偵との会話の部分に集約されている。
文句なしに傑作。
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