【アニメ】・「ルパン三世 GREEN vs RED」
監督;宮繁之
脚本:大川俊道
「ルパン三世」40周年記念のOVA。
(以下のあらすじは記憶だけで書くので、間違ってたらスイマセン。)
にせもののルパンばかりが現れる日本。どれもが容姿はルパンそっくりだが、本物のルパンにはほど遠いケチな野郎ばかり。中には万引きで捕まるルパンすら現れる始末。
そんな中、ラーメン屋でバイトしている青年・ヤスオは、偶然ルパン風の緑のジャケットとワルサーP38を手に入れ、自身も「ルパン三世」としての人生を歩み出す。
厳重な警備体制によって守られている謎の宝石「アイスキューブ」を盗み出すことを考えたヤスオに、「面白いことをやるのがルパンだ。本物かニセモノかは関係ない」と、次元と五右衛門が味方する。そして不二子までもが……。
もちろん、ニセモノのルパンがあふれかえる中、本物のルパンが現れることを確信した銭形も帰国。
そして、「おれを越えることができるのか?」と、ヤスオの前に本物のルパンが立ちふさがる。
以下、ネタバレあり。
本作は、確かに時間軸を入れ替えていたり、「本物のルパン」他、いつものルパンファミリーの動機を前面に押し立ててないので多少わかりにくいところはあるが、決して「ものすごく難解」な作品ではない(同じことは「大日本人」にも言えるんだけどね)。
「にせもののルパンが現れる」とか「ルパンが増殖する」というのは、もともと変装の名人である「ルパン三世」でときどき出てくるモチーフでもあるわけだし、ものすごーく変わったことをやっているわけではない。
「どっちが勝つか三代目!」だっけ? あれもそうだったし。
そもそも、今のルパンの声だってすでにオリジナルの山田康夫ではなく、クリカンになっているわけだしね。
で、本作の面白いところは、「増殖するルパン」から、本物が再び誕生する、という確信が登場人物たちにあること。
要するに、希望があると思いましたね。全編にわたって。
それも、単に「スーパーヒーローが代替わりする」という話ではない。
ここはちょっと解釈として自信ないんだけど、なぜか本作では無国籍な要素の強い「ルパン三世」という物語が、「日本が舞台でなくてはならない」ということになっていて、
じゃあその日本を支えてきたのは、これから支えていくのはだれなんだ? ってことになる。
それは「ルパン」だけじゃなくて、ルパンになることをあきらめた人たちもそうだし、ルパンを捕まえようとする人たちもそうなんだ、っていうメッセージがあると、自分は受け取った。
アニメで言うと赤いジャケットの「ルパン三世」は、「ヤッターマン」みたいに強く無国籍な感じを打ち出した作品だったけど、
緑のジャケットの旧「ルパン三世」は、どこの国だかわからないような話もあったものの、全体通すとどこか「日本人がバタ臭いドラマを演じてる」という雰囲気があった。どこか「舞台は日本じゃなきゃいけない」と思わせるようなところがあったと思うんですよね。
確か、旧ルパンってタイムマシンの話のときに、先祖が日本人ってことがはっきりしていたし。
最終回だったか、最後のアジトがゴミの埋立地にあったりね。バタ臭いんだけどギリギリのところで日本っぽいところがあった。
だから、私の思い込みかもしれないけどそこに本作は直結してる。
なぜか中野を中心に展開するところとかね。
あと本作ではニュースやスポーツ新聞などから、現実の時事ネタなども頻繁に出てきていて、作品世界が浮世離れした別世界ではないことを強調しているように思う。
つまり、本作には「日本人全体はどこから来て、どこへ行くのか」っていう問いがあって、そこには一陣の風のように「ルパン三世」というファンタジックな存在があったんじゃないかみたいなね、そういうことを描きたかったんじゃないかと思う。
本作を「こんなのルパンじゃない!」って思う人の気持ちもわからんではないんだけど、ただやはり、アウトローの本質は突いているんだよ。
どうも最近の日本人というのはシレッと昔ながらものをシリーズ化して淡々とリリースする、ってことができなくなっちゃってる、ということはあると思う。
いまだに007やインディ・ジョーンズの新作ができる、そういう柔軟さはあんまないんだよね。実際「ヤッターマン」のリメイクも成功しているとは言いがたいようだし。
「ルパン三世」も、言ってみればイレギュラーな存在である「カリオストロの城」に呪縛され続けているとも言えるんだが、しかし「現代性」ということを考えたときに、私自身は本作は認めざるを得ないんだよなあ。
少なくとも幻の「押井版ルパン」にギリギリ接近しながらも、よくここまでまとめたなという印象が強い。
当時の押井版ルパンのあらすじをウィキペディアで見ると、あまりに実験的すぎて「こんなのできるわけない」って思うし、青臭いチャレンジ精神が先走りすぎていると思う。ルパンとは関係ないけど昔の「エヴァ」にも同じものを感じる。あ、あと井上敏樹の平成ライダーにもね。
だけれども、何歳くらいの人間がつくってるか調べてないが、本作は実験作としても、わりと落ち着いているんだよ。
印象批評で申し訳ないが、既存のものを破壊してやろうとか、名をあげてやろうとか、芸術的なものをつくってやろうとか、そういう野心は、私はこの作品に感じなかったですね。
どこかで地に足の着いたものをつくろうという強い意志があったのではないか、と思うんだけれども。
そういうところが、気に入ってます。
前に書いた文章。参考までに。
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