【萌え談義・その6】・「萌えヲタの問題は『普通人内弱者』を認めるか否かの問題だ」
以前にも書いたとおり、独自の知識・価値大系を持つ「オタク」の中に、新参者が入っていくのはなかなかむずかしい。
体育会系だったり縦社会だったりすれば、能力のあるものが一気に上にあがることも無理かもしれない代わりに、新参者を受け入れるシステムがたぶん整っている。
しかし、「オタク」というのは基本的に文化系サークルのノリ・価値観を引き継いでいるので、そういうシステムは持たない。
その価値大系を、ある意味で「ちゃぶ台返し」しようと無意識的に思っているのが「萌えヲタ」、あるいは「萌え」に強い価値を置くオタクなのではないか、というのは前に述べた。
その1
「知識の集積」を無効化しうるのは、「感性」である。「萌え」というのは知識大系に対する感性の逆襲であった、と自分はとらえている。
たとえば60~70年代、「感性の時代」なんて言われたのは、それまでの知識大系の価値がゆらいでいたからだが、
それと同じ現象が、そうとは気づかれずに小さなかたちで繰り返されたのが「萌え」という存在のオタク内における強調だったのではないかと、自分は思う。
さて、「感性」を絶対的価値としておいてしまったときに何が起こるかというと、いちじるしく「価値」の優劣、上下関係を決めるのがむずかしくなる、ということである。
悪い言い方をすれば、「価値大系」という観点からすればグダグダになるのである。
歴史性も無視されるから、過去も未来もなくなり、常に現在だけがある。現在「萌える」ものだけが。
その2
そして、それはどういうことかというと、まあぶっちゃければ、けっきょく「弱者の価値観」ということになると思う。
だって優劣もないし、「つきつめる」ということもないんだから、少なくとも「萌え」という価値大系の中には、勝者も敗者も生まれないわけだからね。
「勝者と敗者の区別を望まない」のは、やはり弱者の価値観だろう。
で、ここでその「弱者」を決定的に決められるかどうかで、見解は変わってくる。
たとえば、「社会的弱者」というのは、かなり厳密に特定できるのではないかと思う。
実際、いろんな境遇でひどい目にあっている人はたくさんいる。シビアな問題である。
が、オタク論、萌え論における「弱者」とは「精神的にタフではない者」程度の意味だから、認定がむずかしい。
いや、そもそも認定する意味があるのか、という問題がある。
「気の持ちよう」なのだから、どうとでもなるだろうと思っている人もいるだろう。
その3
私の考えでは、「気の持ちよう」なんて言い出したら、たちまち「努力すれば何でもできる」的な方向に言ってしまうので、感心しない。
「気の持ちよう」なんて、かたちがないからさもどうにでもなるように思えるが、自分の気持ちが自由にできるなら、だれも苦労はないのだ。
だから、気の強い人間ができることを、気の弱い人間ができないのは私は当然だと思っている。
そして、弱い者の願望充足の、一種フリークス的な追求が「萌え」なのである。
誤解してほしくないのは、「萌えヲタの中にも脆弱なヤツがいる」という話ではなく、「弱いからこそ、萌えにひかれる」ということである。
(念のために書いておくが、普通の生活における人間性や仕事のがんばりが弱いという意味でここで「弱者」という言葉をつかっているわけではない。)
その4
もともと、第一世代的な考えではオタクの中に「心が弱いからオタクになる」というような側面はなかったかもしれない。
しかし、第二世代以降ははっきりと、「精神的弱者のためのオアシス」として、オタクというフィールドが機能していることは否定できない事実であろう。
「萌え」を含んだ「オタク的なもの」は、常に時代の強者、マッチョ、強い考えに対する、あまり論理的ではない、無言の反抗として存在してきた。
具体的に言えば70年代後半から、「萌え」という言葉ができるまでずっと、である。
そして「萌え」として顕在化して初めて、論理的な反抗をくわだてたフシがある。それが有効か無効かは別にして。
誤解を恐れずに言えば、「萌え」が中途半端であり、へタレであるのではなく、中途半端で、へタレで、どうしようもない者を吸収するのが、「萌え」なのである。
こうした考えは、マッチョな観点からは理解しがたい、あるいは許しがたいものであるだろうが、
「オタク文化」全般が、それまでの知識大系や、あるいは社会体制そのものにまで反発してできてきたことを考えると、当然ということも言える。
「弱いから萌えヲタになった」のに、「萌えヲタは弱い」と言ったって、それは同義反復である。
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