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【映画】・「魁!! 男塾」

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監督・脚本:坂口拓

あらすじ:ものすごく厳しくて恐い学校「男塾」でみんながケンカする。
「驚邏大三凶殺」(原作より一人足りない)がクライマックス。
基本的には、よくできた方なんじゃないかと思う。
脚本もよく練れていた。

問題は、原作なんだよ。それと時代性。

・その1
「魁!! 男塾」の原作を、テーマ的に批判するということほどアホらしいこともないとは思うが、リアルタイムでずっとひっかかっていたことでもあるので、バカを承知で書こうと思う。

まず「男塾」の最大の矛盾は、「絶対封建制」なのに先輩とガチでケンカしたりしているところ。
いちおう、私としてはさまざまな好意的解釈を試みた。「網走番外地」が好きであろう作者にとって、男塾は「学校」であるよりも「刑務所」なんじゃないかとか、当時の少年ジャンプの「下克上」な雰囲気が反映されているんじゃないかとか。
名門であるはずの男塾の教官たちが、なぜか小悪党みたいなやつらばっかりなのは、あれって刑務所の「看守」的イメージなわけでしょ。

しかし、いくら読み返してみても「驚邏大四凶殺」に、桃太郎たちが参加する理由があまりにも希薄なんである。
これって鉄砲玉と変わりなくないですか?
その後の、「大威震八連制覇」以降はもっともらしい理由が用意されていたり、まあこっちも慣れてくるんだけど、「驚邏大四凶殺」にはいまだに違和感があるんだよね。

映画の方では、それを「伊達臣人たちが、他の男塾生たちをボコボコにした」という理由をクローズアップすることで豪学連との因縁をつくり、うまい具合に仕上げていた。完全無欠のヒーロー・桃太郎と、単なる普通の少年・秀麻呂を対比することによって観客の感情移入をスムーズにもしているし、松尾や田沢といった平均的塾生(?)もきっちり描いていて好感が持てる。
(ちなみに松尾が「ホーム・チーム」の与座で、田沢が「瞬間メタル」のボクシングやってそうな方の人。この二人はいい仕事してた!!)

対するに、原作では初期の方は本当にいいかげんなんだよな。
理由のないところに理由をつくっている感じが、すごくしてた。

本当、こういうこと書くとバカにされるかもしれないけど、「太陽を盗んだ男」で、すでにジュリーには原爆を使って何かをやる、その「何か」の部分が喪失しているでしょう。
その虚無感を、80年代に入ってからの「男塾」も確実に受け継いでいたと思うんだよ。最初は。
いや作者はそんなこと思ってないかもしれないけど、
「驚邏大四凶殺」に関してはどうしても、何を理由に戦っているのかがサッパリ見えなかったんだ、原作では。

そもそもが、もともと「男塾」って「花の応援団」とかの体育会系コメディの、さらなるパロディだったわけでしょ。
アンケートの結果次第では、そっちにシフトした可能性もあると思うんだけど、
もしそっちに行っていたら、ものすごいグダグダなものになっていたと思うんだよねえ。

だって、宮下あきらにはたぶんそんなに体育会系体質、ないでしょう。本人にはあるのかもしらんけど、描くものに関しては野武士集団みたいなさ、勝手に集まってきちゃって、そこからいつの間にかリーダーが出てきて一歩引いたキザなやつが出てきて、お調子者が出てきて……というのがいちばん合ってるはず。

んだから、映画の話に戻ると原作の「驚邏大四凶殺」までの過程というのが非常にブレのある展開だと私は思うわけ。

・その2
原作がそんなだから、脚本全体としては非常によくできているとは思うんだけど、「時代性」がまったく無い。
今、この時代に、「男塾」を映画化しなけりゃならない、そういう理由がどうしても見当たらないんですよ。

もともと「男塾」というのは、「絶対封建制のスパルタ教育の私塾」という面と、「通ってるやつらが武器とか持ち歩いていつも私闘をやってそう」という面とがすごい矛盾している。
これが「クローズZERO」ならまだわかるんですよ。悪い高校入って、やること何にもないからとにかくケンカする、ってのは。
だけど男塾って、こういうこと書くと「深読み」とか言われるかもしれないけど、少なくとも初期の「驚邏大四凶殺」くらいまでは矛盾してると思うんだよね。

繰り返すが脚本は非常によくできているんだ。
単なる鬼軍曹でしかなかった鬼教官のキャラをほんの少し立たせていたり、強い塾生と弱い、その他大勢の塾生とをきっちり描いていたり。
秀麻呂の人間的成長を描くのも、バランス的にうまく行っていたし。
「驚邏大四凶殺」の四人を三人にしたのも、映画がダレないようにするには必要なことだったと思う。

映像も殺陣も、けっこうがんばっていたと思うしね。ちゃんと斬られて血が出るところとか、虎丸が熊と戦うところなんか、最高でしたよ。

でも、観ている最中「なんで私、これ観てるんだろうなァ……」っていう疑問がずっと頭に浮かんでしまっていた。
そこにはやっぱり、原作のギクシャクさがあると思うんだよねえ。
同じアナクロな映画でも「ワイルドスピード3」なんかは、私も大喜びで観ているわけだから。

どうも80年代的な、アナクロのパロディを今やる、ということが思ったよりずっとむずかしかったんじゃないかという気がするんですよ。

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