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【映画】・「ホットファズ(Hot Fuzz)」

監督:エドガー・ライト
脚本:エドガー・ライト、サイモン・ペグ
主演:サイモン・ペグ
2007年、イギリス/フランス映画

公式ページ

優秀でカタブツで、ささいな不正も許せない熱血警官ニコラス・エンジェルは、がんばりすぎたために田舎に飛ばされてしまう。
警察は、中央でもやる気がなかったが地方ではもっとやる気がなかった。飛ばされた先でも熱血警官ぶりを発揮するニコラスはいたるところで地元警官や住民と衝突。そんなとき、殺人としか思えない交通事故が起こって……。

イギリスっぽいブラック・ユーモアにアメリカの刑事アクションの爽快感をプラスした傑作。

「イギリスっぽい」ということがどういうことなのか、断言できるほどイギリス文化に触れてはいない私だけど、
たとえばイーヴリン・ウォーとP・G・ウッドハウスとG・K・チェスタトンと銀河ヒッチハイク・ガイドと、そしてモンティ・パイソンに共通項が見出されるなら、それが「イギリスっぽいユーモア」だと思う。

私が勝手に考えるその共通項は(「モンティ・パイソン」はちょっと違うかもしれんが)、

・そこら辺の人はみんな知り合い、共通認識がある
・そして排他的、プライドも高い
・だけど、腹の底ではみんないちもつ持っている
・しかし共同体内部には奇妙な広がり、宇宙観のようなものがある
・しかしお役所は異常に融通がきかない

……というようなことになろうか。なんでそうなったのか背景は知らないが、アメリカと違うのはアメリカでは抽象的な「アメリカ人像」というのがたぶんあり、その上位概念の下に民族や階層のコミュニティがある。少なくとも建前上は。
イギリス流ユーモアは、その抽象的な部分と下位概念との乖離が、(外部から見るぶんには)ないように思える。
階層間の衝突に関してはよくわからない。
基本的にイギリスのインテリ的なユーモアは、コミュニティ外部とのギャップで笑わせることが少ないように思う。世界観として、狭いコミュニティの外側には、似たような価値観を内包したより大きなコミュニティが広がっているだけ、というような。

アガサ・クリスティーの小説も見事にそんな感じだ。どこまでも似たような景色を、違う角度で見ると真実が見えてくる。

要するに、自信があって傲慢だということになるんだろうけども。どんなエンターテインメントにも、どこか「新興国」のコンプレックスが現れてしまうアメリカとは、そこが違う。

「Hot Fuzz」のギャグは、やっぱり全編イギリスっぽい。小声で毒を吐いて、とぼけてペロッと舌を出しているような感じというか。「頭から水かぶって大爆笑」とか、そういうんじゃないんだね。少なくともドリフ的ではない(いやドリフ的なギャグもあるけどね。スラップスティックなところもあるけど)。
そして、それが本作のテーマ全体にもつながっている。

ものすごく簡単に言うと、本作は「慣習か、空気を読むか、それとももっと別の価値観を優先させるべきか」というのがテーマである。
アメリカとの比較になると、アメリカの場合は慣習の力があまりに強すぎるか(あるべき「アメリカ人像」とそれが合致するため)、弱すぎるかするんじゃないかと思う。普通のエンタメではそこまで考えが至らないことが多いんじゃないか。

そんな「田舎の慣習」が、本作では「アメリカの刑事アクション映画」的価値観によってムチャクチャになるところがものすごく爽快なのである。
それは、「何も考えたくないやつらがストレス解消のためだけに観る映画」だと思われがちな刑事アクション映画の主人公の背後には「正義、大義」というものがあったのだと思い出させてくれる。

そのような「前半イギリス流、後半アメリカ流」というキメラ感覚は、個人的にはタランティーノやロドリゲス監督が「オタク的ジャンル」をキメラ的にくっつける手法よりは、なじみやすく面白いものであった。

ちなみに、ギャグ、話のテンポ、周到な伏線の張り方、ミステリ的プロット、展開の意外性、アクション、銃撃戦、戦いのアイディア、主人公と相棒のヌーボーとしたデブ君それぞれの人物描写など、どれを取ってもものすごくレベルが高いし、なおかつ日本人が見ても普遍性がある。一級品のエンターテインメントと言える。

機会があったらぜひ観ることをオススメする。

なお、本作は日本国内では韓国版DVDで視聴可能(らしい)。日本語版の字幕も吹き替えも付いている(らしい)。

・参考
「映像ソフトなどに関する署名について」(ふぬけ共和国blog)

映画「Hot Fuzz」の劇場公開を求める会

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