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【映画】・「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

公式ページ

監督:ティム・バートン。

15年前、ある判事に妻と子供を奪われ、無実の罪でどこかにやられていた理髪師が、名前を変えて復讐のためにロンドンに舞い戻る。

バートンの映画って基本的にぜんぶ同じで(深作欣二の映画がぜんぶ同じ、という文脈で同じ)、まず、エキセントリックな、世間からは白い目で見られるような人物が主人公。彼は自分が白眼視されることに悩み、悲しむが、どうして自分がそういう扱いを受けるのか、心の底では理解できていない(つまり、自分は間違っているとは思っていない)。
理解できていないから、主人公の世間に対する復讐は本当に容赦が無い。

……ということを繰り返し繰り返し、ずっと描き続けているのだよねこの人は。
「チャーリーとチョコレート工場」や「ビッグ・フィッシュ」では、その「世間から白い目で見られる自分」というのを「父親との確執」に置き換えて描いた。でもこの二作の主人公二人も、きっと心の奥底では自分のことが悪いとは思っていないだろう。「でも、親父も悪かったよ」って思っているだろう。

ティム・バートンの作品は、そこに乗り切れないとずっと乗り切れない。本作も、スウィーニー・トッドが陥れられて受けた仕打ちや、その後どうやってロンドンに舞い戻ってきたかなどの詳細が導入部でほとんど描かれていないから、「バートン的な主人公」に納得していないと物語に入っていけないのではないかと思う。

さらに、ロンドンに着いてすぐ、彼をひそかに愛していた未亡人のパイ屋の家に居候することになるが、ここら辺の経緯も詳しく書かれていない。

で、決め打ちしますが、バートンってオッパイ星人で、この未亡人がいいオッパイをしているということ以外に、トッドが彼女と一緒に暮らす理由がないんだよねえ。
「スリーピー・ホロウ」でも、女性がオッパイの上半分が出ているような服装をしていて、この時代の人たちはみんなこうなのかと思ったけど、でも撮り方がなー。やっぱりオッパイ星人の撮り方だよ。

そして、マザコン的でもある。未亡人と、トッドが意地悪理髪師から助け出してやった少年との関係が、ちょっと母子相姦的。んだから、女性から観たらこの映画、どう受け取られるかわからないけど、私から観るといつものバートン節。不条理な仕打ちを受けたアウトサイダーが、世間に見境なく復讐する話なのだった。

まあ、原作は古典らしいので、展開に意外性はほとんどないが不幸に見舞われた狂人の傲慢さを、うまい具合に「運命のいたずらで、だれもがみんな悲劇にみまわれる」という壮大なドラマに仕立てることに成功している、とは言える。

バートンは、たぶん基本的に「俺様が一番」と思っている人なので、主人公はラストで幸福になっても不幸になっても、本質的な違いはあまりないと思う。転生して、また別の映画で迫害され、別の映画で復讐するだけだからだ。
もちろん、それが魅力なんだけどね。

本作は、たぶん古典をきっちり描いていると思うので、「チャーリーとチョコレート工場」あたりから、もしかして「巨匠」に脱皮しようとしているのかな、とはちょっと思います。あくまでも、私の勝手な予想。

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