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・「GUNSLINGERGIRL」(4)~(5) 相田裕(2004~2005、メディアワークス)

Gunslinger05
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「月刊コミック電撃大王」連載。
1巻から3巻までの感想は、こちらを参照してください

イタリアの公益法人「社会福祉公社」は、事故などで重症を負い、なおかつ引き取り手のいない少女たちに「義体」という身体を与え(一種のサイボーグ?)、薬物による「条件付け」をほどこして戦闘マシーンとして鍛え上げる。
少女たちは、公社の男たちと組み行動する。その関係は「フラテッロ(兄弟)」と呼ばれる。仕事は主に、闇社会につながる人間の暗殺や反政府組織の殲滅。とくに、五共和国派(通称パダーニャ)は繰り返し出てくる宿敵であるようである。

この作品は本当に静かに恐く、また数年経って続きを読んだがいまだに「萌え」シーンと「マンガ」の現状のなかで異彩を放っている。

詳述しよう。

簡単に言えば、本作は80年代のSF・ファンタジー風味ロリコン美少女マンガの快楽を、ほとんどすべて裏返しにした作品なのである。
いわば宮崎駿の言っていた「女の子がセーラー服でマシンガン撃っているようなアニメ」というときの、「なぜ女の子なのか」、「なぜセーラー服なのか」、「なぜマシンガンなのか」に愚直に設定を付与し、現状の一部をえぐり出している作品なのだ。

少女が紛争の最前線に置かれる理由、少女が「大人の男」と組まなければならない理由、少女がその「大人の男」を愛する理由、すべてが本作では「静かに」語られる。
しかも、世界観としてそこにはだれかの悪意が存在しているわけではない。たとえば少女たちは「義体」を受け入れなければ死んでいたか、生涯をベッドの上で過ごさなければならないほどの重症を負っていた。
たとえば少女たちが「義体」を使いこなしたデータは、一般人を治療するために使われるようである。

また、彼女たちが請け負っている汚い仕事も、作品内では政府関係者のだれかがやらなければならないことになっている。だれかがやらなければ、テロで大勢の人間が死ぬ。

じゃあなぜそれが少女でなければいけないのか? に関してはまた振り出しに戻って理由がある(より正確に言えば、「義体」のプロジェクトそのものに残酷さがあると言えるが、本作では5巻の段階ではいちじるしく非人道的な人間が推進しているというような記述は無い。もちろん、その設定に作者の悪意は確実に存在する)。

それらのことが、徹底して恐ろしいところである。
「萌え」がどうのこうのいうのを別にしてもう少し視野を広げてみても、実際、子供たちが戦争や紛争、テロの犠牲になるということは、残酷だがあるだろう。被害者になるのは当然として、加害者となる場合もある。じゃあなにがそうさせているかというと、簡単にはときほぐせないような状況になってしまっているのだろう。

「しかし本当にそれでいいのか!?」と、読んでいるうちに思いをはせてしまうのであった。

実は自分は「ぼくらの」のあらすじを聞いているだけで気分が悪くなって、アニメも観ていないし原作も読んでいない。どうも露悪的な匂いがしたからだ。自分は、露悪的なものを、最近好まない。

本作に関しては、もっとずっとひかえめであると思う。どこかハードボイルドな感じがするのである。そこが(少なくとも5巻までは)気に入っている。
特別に、登場人物の一人の少女の人形(ピンキーとかいうやつね)が商品化されたらしい。「対テロ対策用の人形」として扱われているキャラクターを、本当にかわいい人形にして出してしまうという恐ろしさ! そこには、そんじょそこらのロリコンアニメを観るときよりも何倍もの背徳感を、自分は感じる。

作品そのものの話とはズレるが、このような「結果論的な風刺」は、どんな天才現代美術家でもできないだろう。

本作が重要なのは露悪的なところではなく、「受難者としての少女」が、静かに、静かに、ときにはメルヘンチックに、世界のクソッタレな状況の中で語られる、その重さにある。

エンターテインメント性と風刺性、純粋さと残酷さ、読者の受け取り方の振れ幅、どれをとっても個人的に、今まで読み進めてきた5巻までは絶賛に値する。

なお、この先はまだ読んでいないが、おそらく回を重ねるごとに「サスケ」とか「カムイ外伝」みたいな忍者ものに近づいていき、凡庸化するという危険性はある。
なぜなら、少女たちを取り巻く世界を詳細に描けば描くほど、当初衝撃的だった象徴性が薄れ、「フラテッロ」は「非情な忍者たち」にかぎりなく近づいていってしまうからである。

まだ続き読んでないから、あまり勝手な予想もできないけど。

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