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【感動自作小説】・「栗太郎とひょっとこ姫」第4回

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第3回

受話器を持った手がワナワナと震え、何か言い返そうと焦るが口はぱくぱくとするばかりで声が出てこない。

「-ー!!」
{なんだ?」

小麦粉ババアの叫び声があまりに激しいので、ズンドコ之助には聞き取れなかった。とっさに聞き返してしまう。

「少なくとも、箱入り娘のひょっとこ姫はもともとひょっとこ王国のお姫様。クーデターで国を追われたが……。おまえらのようなニート風情にとやかく言われる筋合いはないわ。
おまえたちに、あのファミレスの奥の席はぜったいに渡さん!!」

今度ははっきりと聞き取れた。

「なんだと、このー!!」

ズンドコ之助がさらに何か言いかけたとき、ガチャン、と電話が切れてしまった。

牛くんが、勝手に切ってしまったのだ。

「警察呼ぶよ」

牛くんが、顔を2ミリくらいまで近づけて言ってきた。
よだれくさくて恐いので、ズンドコ之助は家に帰った。

そして、残りのサンドイッチをまた食った。

数日後。
いらない本を整理していたら、その中の1冊に1000異次元円札がはさまっていたので、ズンドコ之助はひさしぶりにファミレスに行った。

そうしたら、彼が自分で「自分の場所」と勝手に決めている奥の座席が、見知らぬ小僧に占拠されていた。
丸坊主で、真っ赤なスウェットを着ている。視線は手元の携帯ゲームにはあるが、ただならぬ迫力がある。

(小麦粉ババアの孫だ!!)

ズンドコ之助は思った。

小麦粉ババアには、日々ドロボーに励む息子や孫が何人もいる。今、座席を占拠しているのもそのうちの一人だろう。
ひょっとこ姫の兄か弟に違いない。

「あいつ、よく来るの?」

ズンドコ之助は、近くを通りかかったウェイターに聞いた。

「最近、毎日来ますね。1日のうち三分の二くらいはあそこの席にいます」

三分の二! それではほとんど自分があそこの席に座れないではないか。

(ババアだ!)

小麦粉ババアが、いやがらせに孫の一人を、陣取らせているに違いない。
しかし、ケンカに弱いズンドコ之助には何も言うことができない。

ズンドコ之助は家に帰った。
家には何もしないでゴロゴロしている、彼の子供や孫がたくさんいる。

そいつらには、正面切ってこわもての小麦粉ババアの孫を何とかできるものなど、一人もいない。
しかし……。

「そいつは、小麦粉太郎ですね。小麦粉ドロボー一家の中でも下っ端で、使い走り的存在です。別にドロボー稼業においてはいてもいなくてもいいので、ファミレスの席を陣取らされているのでしょう」

やや生意気な口調でペラペラとしゃべる少年。
彼はズンドコ一族の中でも最も情報通と言われる、栗太郎の弟、桃次郎であった。

「ぼくにいい考えがあります」

第5回につづく

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