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【萌え談義?その4】・「あまりにも狭くとらえられすぎている危険性」

人と話をしていると、「萌え」概念を賛成派も反対派も、狭くとらえすぎていることを自分は危険視している。
でもそういう人はあまりいませんな。

何度も書いているけど(ブログって同じことを何度も書かないとすぐ忘れられちゃうから)、
「萌え」ってオタク第一世代とそれ以降の世代を、それ以降の世代が自分たちを独自のものとして浮かび上がらせるために積極的に使った言葉、という印象がある。
もちろん、第一世代でも「萌え」って使う人はいるのだが、その辺は曖昧になっているようだ。

自分がいつも考えているのは「いつから男の読むマンガで女の子をかわいく描こうとするようになったか?」である。
そして、それは萌えとは紙一重のものだと思うのだが、「萌え」概念を積極的に推し進めていこうという人たちはそこら辺のことは重要視していないらしい。

ここらに、私とそれ以外の人との間でだいぶ齟齬があるように感じている。

これもまた同じことを何度も書いているが、
たとえば手塚、藤子、石森なんかはかわいい女の子を描こうとしていた。
しかし、おおっぴらに読者が「おれはこのマンガ家の女の子がかわいいからこのマンガを読む」と言えなかっただけだ。
(オタク史は需要史だと考えた場合、このように読者側の「声」が認識されていない以上、「萌え」は存在しなかったという理論は、成り立つことは成り立つ。)

トキワ荘世代が描く女の子のかわいさは、80年代あたりからオタクたちに再認識、再発見される。そういえば喜国雅彦が、ちばてつやの描く女の子のかわいさについて書籍で語っていたことがあって、それはコンセンサスにはならなかったが、そういうことが案外重要だったりするのである。

70年代には、「ドーベルマン刑事」で恋愛シーンを描くと人気があがったらしいから、潜在的な需要はすでにあった。ウィキペディアによると鳥嶋氏はマンガ内で恋愛を描くことに積極的だったらしく、まあサンデーやマガジンに関しても調べなければならないだろうが、少年ジャンプ内での、「萌え」かどうかはともかくそれ以前の「恋愛もの」、「ラブコメ」を用意したのは鳥嶋氏ほか数人の編集者だったらしい。

まあだれが推し進めたかはともかく、編集者が推したということは、読者側に需要があったということである。

多くの場合、このあたりが曖昧になっているのが、自分の力不足もあり言語化できないのがいらだたしい。

たとえば少年マガジンの場合、「ラブひな」が萌えマンガであることは間違いないと思うが、同じ作者の、それ以前の「AIが止まらない」はどうなのか、っていうと、これだって萌えマンガだと思うが積極的に取り上げられはしないだろう。

この辺に、なんとなくイライラするのであった。

たまに2ちゃんねるなどを見ていても、古いマンガのHシーンは「マンガっぽい絵だから萌えない、抜けない」と(おそらく若い世代から)一刀両断だが、
マンガの中のオマケ的なワンシーンならともかく、たとえば遠山光のマンガはそれメインで人気だったわけで、
なおかつ遠山的な女体の描き方が必ずしも当時のHマンガとものすごくかけ離れていたわけでもない。

たとえば、昔のビデオを観ていてバブル期の女性があまりに眉毛をブッとく描いて、化粧が厚く、肩パットが入っていることに引いてしまうことがあるが、女性の顔自体が変わったわけではない。
何かこう、萌えに関しても観る側が「時代」というフィルターで見ているために、歴史がつながっていっていないのではないかと思えてしまう。

そうそう、ひとつ大事なことを思い出した。
「うる星やつら」がアニメ化した際の高橋留美子のインタビューがアニメ雑誌に載っていて、「ラムがかわいくなりましたね」という印象を語っていたことがある。

確かに、ラムというのは初期の原作では、外見はヤッターマンで言うとアイちゃんよりもドロンジョ様寄りだったのではないかと思う。
ところが、アニメ化の際にはアイちゃん寄りのカワイイデザインになった。これは私も当時から思っていた。顔を丸顔にして、どちらかというと幼くしたという印象がある。

で、現在の「ラムちゃん」の一般的なイメージは、このかわいい方だろう。
「萌え」的な変化があるとしたら、ここら辺ではないかと思う。

それまでは、「色気」というと大人の女しか持っていない、という建前があった。
(そうではないことを表現した映画などもあったと思うが、あくまで建前上は。)

ところが、ラムちゃんあたりから時代がそうではなくなっていく。

だから個人的には、90年代半ば以降の変化は、この頃の変化をそのまま方法論としては推し進めていっただけで、どうしてもたいして重要だとは思えない。

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