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・「スティール・ボール・ラン」(1)〜(11) 荒木飛呂彦(2004〜2007、集英社)

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週刊少年ジャンプ、ウルトラジャンプ連載。
19世紀末、前代未聞の馬による北米大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」が開催された。
「鉄球」の「回転」によって数々の不思議な力を発揮する男、ジャイロ・ツェペリもこのレースに参加。そして彼の鉄球の回転を見たとき、銃で撃たれ足が動かなくなってしまった天才ジョッキー、ジョニィ・ジョスターはそこにこそ自分の「希望」があると直観し、どこまでもついていこうとする。

二人のレースを妨害しようとさまざまな敵が襲ってくるが、その中には「スタンド使い」もいた。

言わずと知れた「ジョジョ」シリーズ最新作。ただし、時系列的にそった続編ではなく、どうやらパラレルワールドらしい。前作「ストーンオーシャン」で一周してしまった世界だという説もどこかで読んだ。
このため「スタンド」の概念も多少異なるかと思われたが、回を追うごとに前作同様の「ルール」に落ち着きそうだ。

少なくともこの「スティール・ボール・ラン」の11巻までの段階では、まだ荒木飛呂彦が最前線を走っていることを確認できる。

・その1
荒木飛呂彦は、少年マンガ家の中でも「正義とは何か?」を前向きに、かなり真剣に考えてきた作家だと思う。
そして、同時に悪の魅力であるとか、社会的には悪でも当人にとっては必然性のある行動は存在するとか、そういうところまでちょこちょこ描いてきていた。
で、本作ではさらにそこのところに意識的になっているのではないかと思う。第一、レースの目的は各人違っており、各人に正当性がある。その目的をいかに達成するか、そのためにどう生きるか、が本作における「行動の正当性」になっている。

その中で注目すべきは、単行本第7巻〜8巻のエピソード「男の世界」だろう。
刺客、リンゴォ・ロードアゲインは、「正々堂々と決闘して相手を殺すことによって人間的成長を成し遂げ、社会にはたらきかけられるような人間になる」という信念を持った男。単行本の帯では「時代に取り残された男」となっている。

そう、荒木飛呂彦もまた、旧来のダンディズムがすでにアナクロなものでしかないことをじゅうぶん自覚しつつ、なお「男の世界」からヒーローが引き継げるものは何か、を提示しているのであった(「マンダム」というふざけたスタンド名にだまされちゃいけないんです)。
作者の言う「男の世界」が、単純なマチズモではないことは、このエピソードのすぐ後に女性であるルーシーの冒険が描かれていることからもあきらかだろう。変な言い方だが「男の世界」には男も女もないのであった。

・その2
次に感動的なのは、単行本10巻から11巻にかけての「サイレント・ウェイ」というエピソードである。
「男の世界」は、お坊ちゃん育ちのジャイロが人間的に成長するためのエピソードで、プロットの面白さはすごいのだが、「ジャイロの成長」の部分はややとってつけた感があった。
そしてこの「サイレント・ウェイ」という話は、ジョニィが成長するエピソードだが、こちらの方が成長物語としては盛り上がる。泣けるのである。

こんなの、言ってみれば疑似科学なのである(ジャイロの「鉄球」について、荒木飛呂彦本人が連載開始時に「疑似科学」という言葉を使っていたと記憶する)。
しかし、疑似科学なのになんでこんなに感動するんだ!! というくらい感動してしまった。

とくにジョニィの父親との確執、兄の死に関連する自分が飼っていた白ネズミ・ダニーが、ある「飛躍」を通して自身のスタンドの成長に直結する。本当にすばらしい。
しかもこんなバカげた(褒め言葉)エピソードは、日本人的な「因果」に対する考え方でないとちょっと浮かばないのではないかと思う(よくよく考えると映画「レディ・イン・ザ・ウォーター」的な考えだとも言えるのだが。まあ、あれはあれで西欧近代的な考えに対するアンチテーゼなのかもしれないんだけど、いろいろややこしいですね)。

荒木飛呂彦の作風は、無国籍だが根底にはやけに日本人くさいところがある。それが面白い。

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