【書籍】・「心霊写真 不思議をめぐる事件史」 小池壮彦(2005、宝島社文庫)
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幕末から現在までの日本の写真史を追い、「心霊写真」の歴史を概観する本。
滅法面白かった。とにかく詳しい。思いつきで書かれた本ではない。おそらく、作者はオカルトやホラー全般についてものすごく詳しいのだろう。その知識の中から、「心霊写真」の歴史だけを抜き出したら何が見えてくるか、を考察した本だとも言える。
たとえば「心霊」という言葉がどこから来たか、話をそこから始めるのだ。そうすると19世紀の海外のスピリチュアリズムが日本にどういう経緯で輸入されてきたかということが問題となる。
また、同じ「写真」ということで「念写」とも心霊写真の歴史は交錯する。念写実験で有名な福来友吉と、大本教に入信し霊魂不滅を信じる浅野和三郎の考え方の違いなどは、比較するだけでなかなかにスリリングである。
欧米心霊主義は、「科学では説明できないことを科学的アプローチによって説明しようとする」という矛盾を最初からかかえている。だからはっきり言えばくだらないのだが、しかしその成立過程にはそれなりの理由があることもわかった。
心霊写真そのものの歴史としては、専門の写真家が偽造した「明確に顔などが写っている心霊写真」から、ある時期を境に「目と口に見えないこともない三点を、見る側が『発見』することにより成立する心霊写真」へと変わったのだという。
そして、「発見」された心霊写真は専門家によって「鑑定」されて初めて認定されるというシステムができあがり、それゆえに「怪談」を怪談たらしめる物語は簡略化され、堕落(?)していく。
しかし、ブームを経て一般化した「心霊写真」、「映像の中に写る霊」という考え方は、映画「リング」を代表作として今度は創作の中でイメージを開花させてゆく。
そんなことがわかる本でした。
さて、以下は本書とは直接関係ない話なので、読みたい人だけ読んでください。
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