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【書籍】・「ギボギボ90分!」永瀬唯、植木不等式、志水一夫、本郷ゆき緒、皆神龍太郎(2006、楽工社)

Gibogibo

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タレント霊能力者の代表的存在であった宜保愛子の霊視の一種のトリックについて、主に92年放送の番組「宜保愛子・新たな挑戦 ピラミッドの謎に迫る」の詳細な検討によって明らかにした本。

私は今さら「ナンシー関が、今も生きていたら……」って言うのが嫌いだ。それは「テレビに対して独自の視点を持て」と主張し続けた彼女の主張に、けっきょく依存しているにすぎないからだ。
また、ネットワーカーが彼女とは違う視点のテレビ評、人物評に関してまったく評価を加えない(と、自分は思う)のにもかねがね不満に思っている。
いったい、いつまで立ち止まっているつもりなんだ?

そして、本書は優れたデバンキング作業の結果であるとともに、新しいテレビ評のあり方を提示したものだと思うのである。

宜保愛子は2003年に亡くなったいわゆる「タレント霊能者」だ。「宜保愛子・新たな挑戦 ピラミッドの謎に迫る」は、彼女が吉村作治などとエジプトに赴いて、まあいろいろと霊視するというテレビの特番だが、本書はとにかくそのひとつのスペシャル番組に関する分析・検証がハンパじゃないのである。

ナンシー関大好きっコ(私もそうだが)には一種のあきらめがあって、それは「テレビは陰で何が行われているかわからない」という、評価とか鑑賞におけるあきらめである。たとえばお笑い中心のバラエティ番組でも、「編集」によってストーリーがつくられているというのはよく語られているところであって、出演している芸人がいったいどこまですべっているかはよくわからなかったりする(だからこそ、テレビ画面に映っているものだけを観て勝負するのがナンシーチルドレンだ。まあ厳密にはいろいろと調べもするけど)。

ところが、永瀬唯氏は「編集されている」程度のことでは簡単にデバンキングを放棄しない。もう本当にその視点・調査・推理力はすごいので読んでもらいたい。ヘタな推理小説よりもよっぽど面白いことは保証する。
大ざっぱに結論を言えば、「テレビ番組」という曖昧模糊とした存在でも、知力でこれだけ分析ができるとわかる、ということだ。

また、宜保愛子の霊視が彼女を信じる者、あるいは疑う者との関係性によって成立していることがわかるのも注目すべき点だろう。
上記はやや飛躍した私の評価だが、要するに本書では「『宜保愛子に英語が読めるわけがない』などの、受け手の『オバサン差別』が一種のトリックになっている」と指摘されているのだ。それは要するに「『霊視』のリアリティが霊能者と受け手との関係性によって成立している」ということであろう。
宜保愛子は「実はけっこう勉強している」、「背が高い」、「衣装(と本人のイメージとの関係)が独特」などの特徴があり、彼女自身がそれを自分の印象操作として利用していたというのが本書の見解だが、それを彼女がどの程度計算でやっていたのかは、なかなかわかりにくいところがあるように感じるのである。

たとえば「普通のオバサン」としてのイメージを利用したいなら、あんなに派手な服は着ていなかったとも思える。宜保愛子個人が完全にタレントとしての自分をセルフプロデュースしていたと仮定して、やはり彼女の霊能者のイメージというのはさまざまな他人との関係性を通して半ば意識的に(「片目が見えないがゆえに幻が見える」とも言われたが、片目が見えないことは宜保愛子の自己申告でしかない)、半ば無意識的にかたちづくられていったと考えるべきなのだろう。

また本書における、彼女の霊視を評価する学者の発言、態度への着目も面白い。彼らの評価が叙述トリックをしかける宜保愛子との無意識の「勝負」となっているからである。
インターネットがある現在だと、また宜保愛子の情報収集とそれに対する評価もまた違ってきていただろう。要するに2007年の江原啓之が2007年の彼でしかないように、1992年の宜保愛子も92年にしか存在し得ないパフォーマンスを展開していたのだ、ということを読者は知らされるのである(この後、ここまで厳密にやらなくても霊視を信じ込ませられると思ったのか何なのか、宜保さんの霊視はレベルが下がるそうである)。

惜しいのは本書が2006年に出たということ。流行り廃りの激しいテレビタレントを題材としているだけに、せめてあと3年早く出ていれば……と思う。「テレビに対する視点」に関しては新しい要素がてんこ盛りになっているだけに、なおさらその感が強まる。

宜保愛子の霊視への疑義をうったえるとともにそのタレント性を高く評価しているので、読後感はいわゆる批判本を読んだとき独特の居心地の悪さを感じないのも本書の特徴。
超常現象や霊能力批判だけではなく、タレントとしての宜保さんのファンにもオススメできる。

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