【同人誌】・「円盤本専門同人誌Spレビュー」(1)「円盤本の夜明け」号(2006、Spファイル友の会)
「僕らには所々穴が開いた、出来損ないのパンケーキがある。円盤本を読もう。」
(本書前書きより)
円盤(つまり空飛ぶ円盤、UFO)について書かれた本のレビュー集。
目次などは公式ページのここ参照。
冬コミで買った同人誌。とても面白い。本書を読んで、いろいろと考え込んでしまった。
本書は、円盤(UFO)について書かれた本についてさまざまにカテゴライズして語っている。
UFOについてなじみのない人は本書の「UFOの良書」という章で取り上げられている本から読むといいだろう。
UFOについて考える際、何を読んだらいいのかわからない人が大半だと思うので。実際私もここで「良書」として取り上げられている本を何冊か読み、はじめてUFOに興味を持った。
本書の初っぱなは「こんにちは幽霊飛行船神話」といきなりマニアック。「幽霊飛行船」とは、「空飛ぶ円盤」が目撃される前に観られたという空に浮かんだ幻影である。「幻影も進化する」というたとえでたまに語られるが、それのみを切り取って見せるというのは本書のマニア度の高さを表しているだろう。
懐疑主義的な「良書」を勧めたかと思えば「青い本を返して!!」という章ではアブダクション本を特集。アブダクションというのはUFOに連れ去られて人体実験をされて……というアレである。
他にもUFO本の目録やニラサワさんへのインタビューなど、興味深い記事がいっぱい。山本弘、志水一夫、原田実各氏といった、と学会関係の人も書いている。
さて、以下は私がつらつら考える自分語りに近いものなので、読み飛ばしてもいいです。
私が「UFO」について語られた本が面白いと思ったのは、戦後60年近く経って、それが総括されかかっているからである。もちろん70年代当時、終末ブームの中で、ユリ・ゲラーやノストラダムスとともに語られた「UFO」(テレビでは矢追さんが活躍)をリアルタイムで知っている世代でもあるが、それは私にとって本当の意味で「なんだかわからないもの」であり、その取り扱い自体に論争が生じる面倒くさいものでもあった。
すなわち戦後50年当たりから「総括」されかかっている「UFO」と、50年代から90年代初頭あたりまでの「UFO」とは違うものだという感触がある。「祭り」はすでに終わっている(ような気がする)。
だから私のようなものがUFOについて語るとすれば、それは後出しジャンケン的なずるい行為だとも思う。
そのうえでふだん思っていることは、この「不思議」感覚って何だ、ということでもある。
ウソだとわかっていても幻だと思っていても「不思議」という感覚は生じる。最近思うのは、時代時代でそれが持ち上げられたり圧殺されたり(オウム事件のときがそうだった)、あるいはインテリとそうでない人、金持ちと貧乏人といった差で取り扱いの違いが出てくるかもしれないが、けっきょくそういう部分をないがしろにしては人間は生きていけないということだ。
ちょっと二枚舌みたいになってしまうが、私は不思議関係のものはいったんすべてデバンキングされなければいけないと思っている。それはインテリの人のノブレス・オブリージュだと思う(だから、あやしげなものは黙殺すべし、という多くの学者のスタンスには納得がいかない)。
そして、「そうやってデバンキングしても最後に不思議が残る」とも、実は思わない。いや、細かく見てみればまだ世の中にはわからないこともあるのかもしれないが、そういうロマンチシズムは自分にはもはやない。
しかし、「真実をバクロして、完全に何もかもが明らかになってゼロになってもなお、『不思議』という感覚は残る」とも思っている。
後はそれをどう自分の中であやすか、である。
懐疑主義は懐疑主義で、「そういうものは、ぜったい、まったく信じもしないし魅力も感じない、フィクションにはいっさい触れない」という人がいたとしたら、そのエキセントリックさ自体が不思議、という面白さもあるのだがそれはまた別の話。
オウムみたいなものになびかないためには、「不思議ってなんだ」と立ち止まって考えてもいいと思うのである。
以下、さらに余談。
UFO、死後の世界などの疑似科学とオウムの関係は、
「ロリコン」とか「オタク」と宮崎勤の関係と、相似形を成している。
(宮崎勤は本当にロリコンか、などの議論もあるがあくまで受け取られ方として。)
戦後、突如出現したかのように思われる新興文化という意味でも、「オタク」と「UFO」って似てるよね。
そして、「歴史を丹念に追わないとよくわからない」、「その時代時代の当事者しかわからない部分がある」というところも、実は似ているのだった。
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