【アニメ映画】・「パプリカ」
原作:筒井康隆
監督;今敏
他人の夢に侵入できる装置「DCミニ」が何者かによって盗まれる。これを利用して誇大妄想患者の妄想を植え付けられた者がおかしくなってしまう事件が発生。DCミニの開発や利用に携わるスタッフたちは、犯人探しを開始する。
その中には「夢探偵」とも言える謎の女性「パプリカ」がいる。
いやあ、良かったですよ。こういう「現実に夢が侵入して大混乱になり、やがておさまる(「おさまる」ところが重要)は大好物なので、スクリーンを観ている間中楽しませていただきました。
以下はネタバレありの感想。なお、原作は読んでません。
自分はもしかして、今敏という監督のつくるものがものすごく好きなのかもしれない。
本作では「夢」の中に人間の精神が侵入し、その中でどのようにふるまうかを描くのがメインだと思う。そしてそれは、映像が映像としての面白さを存分に発揮できる設定だ。
本気出せば今なら実写の中にCGを入れることで似たような効果が簡単に出せるのかもしれないが、やはり「夢と現実の交錯」を描くには、「現実」も「夢」も、同じ「絵」として地続きに描かれるアニメやマンガ。とくにコマとコマとが切断されてしまうマンガよりも「スクリーン」の上で連続的に映像が繰り出されるアニメの方が適しているだろう。
そして、たぶんこの作品に出てくる手法はすでに先達がやっていることなのではないかと思う。よくは知らないがディズニーとかね。でも、この映画で重要なのは「劇画的な絵で」それをやっているということ。アニメのことはよくわからないので「劇画」にシフトさせて感想を書くとすると、「ある程度リアルだと思われる人物、風景」がとんでもないことをやるのが「劇画」の面白さで、小池一夫原作のものなんかはほとんどぜんぶがそうだった。
手塚治虫はたぶん、引っ張ったり伸ばしたりできるゴムのようにマンガの「絵」をとらえていて、それが必要なのは「荒唐無稽」なことをやるためだった。
だけど劇画はちょっと違う。もともとが「マンガチック」なことを拒否するために構築された絵だ。だけれども劇画というのはけっきょく、その方法で荒唐無稽なことをする方向に向かった。そのギャップが面白い。
アニメ映画「パプリカ」には、その辺の「ある程度リアルなタッチでかなりバカバカしいことをやる」という面白さ、楽しさが横溢している。
たとえば次々と映画のワンシーンの中に飛ばされるところ、あるいは巨大な日本人形が暴れ回る様なんかは、まさに圧巻。
さて、マイナス面について描くとすると、結末は少なくとも1回観ただけではよくわからなかった。もしかしたら原作ではちゃんとしているのかもしれないが。
パプリカが最後の「敵」に勝てた理由がよくわからなかったのだよね。でも、DCミニの事件と平行して描かれる刑事の不安神経症にまつわるエピソードが、トラウマとか青春時代の捨て去った夢とか、ベタなことを扱っているのにとてもキレイにまとめていて感動してしまった。
だから本当の映画としての結末は個人的にある程度どうでもよくなってしまって、観ているぶんには許せてしまったというのはあるんだけどね。
今敏監督の作品としては「東京ゴッドファーザーズ」しか自分は観たことがなかったっけな? このときも思ったんだけどハリウッド流の手垢の付いた物語を、独特の丁寧さで配置し直していくという印象がある。こういう人はたぶん映画製作にあたっての主張自体にとくべつとんがったところはないだけに、安心して観られるという強みがある。
急いでつけくわえておくといわゆる「職人監督」とも印象としては違う。本当に当たり前のことを当たり前のこととして、なおかつ新鮮に描けるということ。きっと、こういうのがいちばん強い。
なお私はあまり声優に感心することはないが、二役をやった林原めぐみはなかなか良かった。古谷徹という「二枚目」専門と感じられる人の起用には、どこか結末の説得力のための作為的なものを感じるけど(笑)。
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