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【書籍】・「エロの敵」安田理央、雨宮まみ(2006、翔泳社)

Eronoteki

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「消えゆくエロ本文化」、「『進化』するアダルトビデオ」、「インターネットの影響と次世代アダルトメディア」の三章に分けて視覚的エロメディアについて書かれた本。
すごく面白かった。
まず「エロは不況に強い」というのは幻想になりつつあるというのは、正直知らなかった。AV業界の人とか、だれでも濡れ手に粟で大もうけしていると思ってましたよ。またいわゆる「エロ本」が本当の意味で変化を遂げつつあること、「インターネットによって『裸』の価値が大幅に下落した」というところなど、漠然とわかってはいたが業界の人から現状分析してつきつけられるとけっこうショッキングですね。


エロ本文化の衰退に関しては、お上の規制の影響が私の予想以上に強かったみたいで、同時にインターネットの影響が降りかかって旧来の意味での「エロ本」というのは無くなりつつあるらしい。
あ、それともうひとつは雑誌の流通が本屋からコンビニに移っているということがあって。「町の小さな本屋さん」がどんどん無くなっているから、書店売りもむずかしくなっているという。
「ニッチなところにニーズがあるだろうから安泰だろう」と思い込んでいたマニア誌も元気がない、というのもこれまたショッキング。「同好の士」を求めるのがきわめてむずかしいからこそマニア誌はメディアとして機能していて、ネットが広まったらその必要性が薄まってしまったということらしい。そういえば「薔薇族」が一時休刊していたのはその辺のことが理由じゃなかったっけ……。

AVに関しては、私は頭がオカシイのでほとんど鑑賞する習慣が無かったんですがこちらも相当メディアの変化によっていろいろと影響を受けているらしい。とにかく若い世代に「エロは無料」という認識がある、というのはショッキングだった。
そもそもが「インターネット」というもの自体が、「情報に価値を置いていない(しかし情報を持っている)人たちがボランティアでどんどんそれらを開示してしまう」という恐ろしいことになっていて、「情報を保持すること」でお金を稼いできた人たちはさぞや頭が痛いだろうとは思っていたのである。
エロメディアというのは「情報の保持/開示」そのものが(それだけではないにしても)価値である、というのがミもフタもない状況でさらけ出されたのがネットの現状だとも思える。

本書でエロメディア活性化のためには「ポルノ解禁か、規制強化か」という極論が出ているのは考えさせられるところである。

本書を読んでひとつ大きすぎる考えとして思ったのは、「エロは無料」という感覚を持った若年世代からどういう感性が出てくるのかということ。「隠された方がエロい」というのはよく言われるところだが、そういう感覚がまったく無くなっていくのか、あるいは二極分化していくのか。
たとえば「萌え」というのはもしかしたら、新感覚の「エロの秘匿性」を表現しているものではないのか(「ツンデレ」なんてそんなもののように思う)。

ひとつ思ったのは「官能小説」の現状について一章さいてもらいたかったということかな。官能小説雑誌に関しては高齢化が進んでいる、ということは書いてあったけど、フランス書院とか、あとナポレオン文庫だっけ? ああいうラノベ系の官能小説とかが、どの程度商売になっているのか。
あるいはインターネットの普及によって活字はどの程度影響を受けているのか、ということがちょっと気になった。

あと反省としては「存在する」ということと「市場規模がどの程度か」ということはまったく別問題だということを再認識させられた。「エロは人間の本能だから永久に無くならない」なんて、まあ真理は真理なんだろうけど商売のレベルでは何も言ったことにはならないんだな、と思ったりした。

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