【アニメ映画】・「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」
「さらば宇宙戦艦ヤマト」は、その作品の出来よりもむしろ「どう受容されたか」が問題となる作品かもしれない。
(出来に関しては、悪くない。)
あくまでも当時小学生だった自分の印象としては「え!? もう終わりなの!?」ということであった。
当時だって「柳の下のどじょう」を探した映画はいくつもあった。たとえばブルース・リー映画。それが小学生の自分にさえドル箱となりうる「ヤマト」というコンテンツを、こうも簡単に終わらすか……!? というふうに思っていた。
「宇宙戦艦ヤマト」がそれまでのアニメとは違っていたのは、明確に「高校生や大学生も観ているアニメ」としてマスコミに報道されたことだ。
それまでも、学生のアニメファンというのはいたらしいのだが(たとえば「トリトン」とか「ガッチャマン」とか)、「ヤマト」がことさら大きくムーヴメントとして取り上げられていた記憶がある。
だから、テレビで放映された最初の劇場版を観てガッカリもした。単なる総集編だったからだ。
今から考えると、最初の劇場版にはビデオもDVDもない時代に、ファンがもう一度作品を鑑賞するため、という意味あいがあったのだろう。
だから小学生の自分はカヤの外、というイメージがあった。
それが、劇場版新作がつくられると思ったらもう「さらば」だという。なんだかちょっと驚いた。
ウチは気安く映画館に連れていってもらえる感じではなかったので、「さらば」は観たくても観られなかった。
ところが、その後テレビ版「宇宙戦艦ヤマトII」では、ラストシーンがそっくり描き変えられて死んだはずの人々はみんな生きているのだという。
百歩譲って、テレビ版はテレビ版なんです、と言うのならまだいい。
ところが、その後「ヤマトよ永遠に」がつくられた。
「永遠に」は、テレビ版からの続きらしい。
こうなったら、何でもありである。
というわけで、私の「ヤマト体験」は最初のテレビ版だけで終わりましたとさ。ちゃんちゃん。
まあこれだけだとナンなので、やっぱり作品について描くことにする。
・SF的ギミック
最大の謎は「なんで反物質世界のテレサがガトランティスに捕らえられていたのか?」だ。だが考える気も失せる。
その他のメカやSF的設定に関しては、ハードSFファンで許せない人もいるだろうがギリギリ「こういう時代だった」と言えなくもない。
あまり「過渡期」という言い方は使いたくはないが、「宇宙戦艦ヤマト」のSF的設定は「過渡期」としか言いようのないものを持っていると思う。
豊田有恒がSF設定には関わっているというが、どうにもこうにも「SFを知っている人と知らない人がより集まってつくっている」感じがしてムズムズする。
「リアルさ」のおとしどころについて、当時同時期にやっていたタツノコプロ作品と比べても、なんかあまり差はない気はするんだよな。それなのに何でタツノコは「人々の話題にのぼる」という意味では記憶に残らず、「ヤマト」ばかりが語られるのかはよくわからんですね。
ある意味、タツノコ作品の方が洗練されている部分もあったしねえ。
逆に、手もなく「ガンダム」以降のリアルロボット路線に客が流れていくだろうな、と想像できてしまうのも哀しいところではある。
・「特攻」ラストについて
「自己犠牲」を扱った作品はこの作品の前後にたくさん出てきているので、本来ならことさらに本作が「死を美化している」などと言われる筋合いはないはずだった。しかし、とにもかくにも本作が「戦艦大和」を扱っているというところが問題と言えば問題。
最初の「宇宙戦艦ヤマト」は、敵を殺すためにつくられ、しかもそれすらもほとんどかなわずに沈んでいった「大和」が人類を救うために宇宙へ飛び立つ、というところにロマンがあったのに、続く作品で全員死んじゃったら何のために前作があったのかわからない。
ま、そんなことを思ったのでした。
アニメの出来としては前述のとおり、悪くないです。
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