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・「○本の住人」(1) kashmir(2006、芳文社)

Maruhon
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「まんがタイムきららMAX」連載の4コママンガ。
小学四年生の蓼科のりことその兄。おにいちゃんは「シュール系絵本」作家とも呼ぶべき謎の職業。後見人として祖父母がいるらしいが出てこない。
兄がどれくらい稼いでいるかも謎だが、食料よりも先にフィギュアを大人買いしてしまうようなダメ大人であることは間違いなし。
そんな兄とのりこ、それと彼らを取り巻く担当編集者や小学校の先生、クラスメイトなどのかなりほのぼの、大幅に変なところのある日常を描いた作品。

私はどうも「萌え4コマ」とその始祖となった系統の4コママンガが苦手で、それは「つっこまれ体質の常識人である主人公」を「マイペース」、「天然ボケ」、「ずうずうしい人」などが取り巻いていてお話が転がっていく、というパターンが苦手だからでもある。
先が読めてしまうからというのもあるし、常に日常の半径3メートルくらいのところでおさまる話にどこか入っていけない印象も持っていた。

しかし、本作は萌え4コマがハマりそうなところをうまい具合に避けている印象があり、これはひとえに作者のセンスのたまものだろう。
たとえば、「兄は絵本作家だが非常に変な作品ばかり描いている」という設定も、慣れない人がやったら「そもそもこの絵本は本当に売れているの? 絵本作家って生活できるの? 絵本ってそんなにタイトに締め切りがあるの?」といった疑問ばかりが浮き上がってしまう。だからこの設定のネックは「いかに本当にシュールな絵本を考え出せるか」なんだけど、そこは作者・kashmirさんの真骨頂というところだろうし、
萌え4コマ的にはありがちな「変なことばかり言うツインテール少女」の言う「変なこと」や、オタクである兄のオタク的奇行(鍋にフィギュアを入れてしまうなど)も、選ぶ単語、フレーズのセンスで面白いものになっている。

本当はもっともっと変な話、不思議なダークファンタジー的なものを描ける人が、萌え4コマ的に体裁を整えている、という面白さがあった。

それとやっぱり絵がものすごくかわいいというのはあるね。それこそ絵の魅力というのは言葉では説明できない部分があるからなあ。
個人的には「ネコ耳みたいなのが付いた水泳帽がクラスで流行った」っていうのがかわいくて好きだった。

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