【映画】・「幻の湖」
原作・監督・脚本:橋本忍、1982年、東宝
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マラソンが趣味のソープ嬢が、何者かに愛犬を殺害される。執拗に犯人を捜し回るソープ嬢。一方彼女は(愛犬殺害以前)、琵琶湖畔を走っているときに謎の笛の音を耳にしている。
まあ、そんなことがいろいろあって、何かが起こるかな、と思うと起こらなかったり、起こらないだろう、と思うと起こったりしながら、延々と(まさに延々と)164分にわたって一人の女性の自問自答が滋賀県、東京、そして時空を超えて戦国時代、果ては宇宙までを行ったり来たりして描かれる超異色・超大作。
「何を追って、何を求めて人間は走り続けるのかーー?」
「知りません。もう勘弁してください。」
(以下、ネタバレあり。)
話だけ聞いてた東宝のカルト大作、実は2003年のDVD発売時に、私は内容を知りもしないで購入していたのである! 6000円も払って!!
たまに名画座のレイトショーでしかかからない、ということを聞いていたし、トンデモ映画だということも聞いていたが、いつ上映されるかわからないなら買ってしまえ、と思ったらしい。
そして、見終わったとき、自分は自分に苦笑した……。
まるで宝を探し当てて箱を開けてみたら、それが海賊キッドの子供の頃に親しんだオモチャにすぎなかったように……。
某大学のマンガ研究会にお邪魔して、そこの会員の方々やOBたちとの部室のテレビ(音響、かなり良し)による上映会となったのだが、ある程度理解ある人たちと観られたことはラッキーであったと思う。
とても一人で、小さなテレビの画面で観るタイプの映画ではなかったからだ。
・脚本について
映画全体のとんでもない長さのために、脚本について真剣に検討することは、ネットを20分くらい検索したかぎりではどのレビューでもなされていなかったように思う。
で、個人的には「そんなに言うほどメチャクチャか」というと、メチャクチャはメチャクチャだが、「なぜメチャクチャになったか?」はあんがい原因を探りやすいのではないか、とも思うのだ。
橋本忍の心境、仕事の変遷などについて調べないまま書くが、おそらく彼は、ヴァン・ヴォークトやディックなどを「まったく知らない」まま、「そんなような作品」を描きたかったのではないかと感じられるのがまず私の感想の1点。
「現在、過去、未来が交錯する」日本文学を私が不勉強にして知らないのだが、だがけっきょくそういうことなのではないか。
もう1点思うのは、話が壮大なわりにはプロットはヒロインの「自己満足」というか「自分の心の中の屈託」にどう決着を付けるか、に終始しているという点。
最近はどうか知らないが、この「現実はどうあれ、自分の気持ちだけには決着を付けたい」というパターンは日本文学、あるいは文芸っぽい映画では80年代には多かったのではないかと予想している。
たとえば、ぜんぜん作風は違うが村上春樹の「1973年のピンボール」(1980年)は、単に自分の中での決着を付けるためだけにピンボールマシンを探すというような話だったし、
なんかまあそういう「流行」の延長線上にあることは確かではないだろうか。
・映画全体について
「長い」ことがこの映画が賛否両論となる最大の理由だろうと思う。
ネット上には怒りと呆れのレビューがあふれているが、コレが2時間ちょっとくらいにおさめられていればそこまでの怒りを買うこともなかっただろう。また、「カルト映画」としてももう少し頻繁に上映されていたと思うのだ。164分じゃ、二本立てにできないしねえ。
これはひたすらに、編集権までが橋本忍にあったことが原因なのだろう。この映画について考えるとき、80年代の東宝、ひいては日本映画界の体質について思いをはせざるを得ない。本当に何とかならなかったものかとは思う。
口をきわめて罵るレビューがある一方で、「けっこう好きだ」という意見があるのもうなずけるところが、この映画のむずかしいところである。音楽は素晴らしいし、映像もとても美しい。
キャラクターは、「愛犬を殺したかもしれない」作曲家、その事務所の受付嬢(荒木由美子)以外はいい人ばかりで、キャラクターに関しては後味の悪さはほとんどない。
ヒロインの勤めるソープランドの支配人(室田日出男)なんて、殺された犬の私的なお通夜につきあってくれたり、犬殺害の犯人探しのために一緒に警察に行ってくれたり、こんな面倒見のいい人いないんじゃないか?
また、「愛犬の犯人を探す」、「マラソンによって犯人を追いつめる」という、サスペンスやエンターテインメント映画大好きっコの興味を引く部分も入っているのがまた、文芸映画だろうと敬遠する人間をも巻き込もうと、いちおう計算したと思える部分である。
総評
プロットに関しては、本作が文芸映画として破綻していたとしたら、その観点から「どこでどのように破綻したのか」をときほぐすことが必要だろうと思う(だれかやってるとは思うが)。
エンターテインメントとして破綻していることは自明だからね。
この映画が上映されたのが82年、カンケイないかもしれないが「さよならジュピター」も「ガンヘッド」も80年代で、何となく「コケた大作」として似たにおいを感じるんですよねえ。関わった人は同じでないかもしれないけど。
今や、「さよならジュピター」も「ガンヘッド」も愛おしい作品だけど、こんなのばっかり見せられたら映画ファンにはならないと思う。
実際に80年代の自分は映画ファンになることはなかった。
アニメ「ゲド戦記」もそうだったが、駄作が鳴り物入りで上映されると、作品そのものよりもそういうことが「アリ」となってしまう内部事情はどうだったのかと考えてしまうんですよ。
とにかく、この映画のDVDは映画研究会や「げんしけん」みたいなサークルの、新入生歓迎の通過儀礼として使ったらいいと思った。
それならDVD代6000円は……やっぱり高いよ!!
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この記事へのコメントは終了しました。





コメント
1983年ではなく,1973年のピンボールですね。
投稿: 長谷川一成 | 2006年10月22日 (日) 09時33分
ご指摘ありがとうございます。後で直しまーす。
投稿: 新田五郎 | 2006年10月22日 (日) 09時43分