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・「最強伝説黒沢」の唐突な最終回

Saikyo05
「最強伝説黒沢」[amazon]が唐突な最終回を迎え、私も少なからずガッカリ感を感じているが、途中から単行本ベースで追っていたのであまり残念がるわけにもいかん気がする。
雑誌の人気があってナンボだと思うから。

また、最終回だけ読んで感想を書くのはおかしいとも思うのだが、単行本でまとめて読んだときにも最終回の感想を書くことを約束して、感想を書いてみたい。

まず、「黒沢」にどのような最終回のおとしどころがあったかというと、非常にむずかしい問題だったと言わねばならない。
黒沢がどんどんのし上がっていってしまったらそれは何か「違うマンガ」だし、
かといっていつまで経ってもダメ人間のミジメ話、というわけにも、作品のテーマ上、いかなかっただろう。

逆に言えば、その触れ幅が面白いマンガだったとも言える。

最終回、混濁した意識の中で黒沢は「アリ」について考える(昆虫の「アリ」である)。
自分は「世の中」に対してアリのような存在だったと。
しかし、それに抵抗したと。無駄、無力とわかっていても抵抗した、そのことに意義を感じて死んでいく。

思ったが、これは映画(原作の小説は読んでないから映画だけの話とするが)「嫌われ松子の一生」[amazon]に近い結論だったと思う。

要するに、人間努力が大切だというけど、決定的に、最後まで報われない努力というのは本当に尊いのか?  という命題があった。

たとえば、ドラマ「大草原の小さな家」ではあらゆる不幸が起こる。ときには人生において不条理としかいいようのない不幸も起こるのだが、
45分間(前・後編に分かれている場合は90分間)で、登場人物たちの心理的決着はついてしまう。

それは、彼らが経験なクリスチャンだからである。
すべて、「神が見ているから」ということであらゆる理不尽に納得する(まあ、「納得でもしないとやっていけない」のではあるが)。

日本人には唯一神はいない。まあ「神は死んだ」とか言われた頃以降の欧米人もそうなのだろうが、よほどシビアに「近代人」像を貫こうと思っている人を除いて、欧米人はまるで「禁煙した人が、我慢できなくなったときに吸うために残してある一本のタバコ」のように、「唯一神」という切り札を隠し持っている気がする。

日本人にとってそれに変わるのは、普通に考えて家族を最小単位とする「共同体」であるわけだが、

ではそれすらも無くなったとき、その人間の価値を決定するのは何なのか?
という問題が、映画「嫌われ松子」とマンガ「最強伝説黒沢」の最終回には、あったような気がするのである。

たとえば、松子も黒沢も、両方とも「家族」がいない。普通人が頼れるような「共同体」は無い。
「松子」は、死後、一度しか会ったことのない甥によってその人生が評価される、というとっかかりを残している。
「黒沢」は、自分に憧れる人々をつくりつつも、自分で自分を最後に評価せざるを得なかった。

けっきょく、ニート、ダメ人間、喪男系の問題というのは、最終的にはそういうところに行き着くと思う。
徹底的にダメだった場合、最後はどうするのか?  ということになるのだ。

今書いていて思ったが、「黒沢」は唯一、そういう、最近流行の「ダメ人間自虐系」のマンガや小説にとどめを刺す可能性はあった。
自分は終盤の展開を把握していないが、他の読者が最終回に尻切れトンボ感を感じていたとすれば、それは達成されなかったまま終わってしまったということだろう。

それはすごく残念なことである。

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コメント

私も単行本で読みました。新田さんのような残念さは感じませんでした。「ニート、ダメ人間、喪男系」の物語をきちんと昇華していませんか? 「徹底的にダメだった場合、最後はどうするのか?」の答えは、戦うこと、女を守ることでは? 「自分で自分を評価する」と書いてありましたが、最後に皆に涙を流してもらったラストシーンは、「他人に評価されている」ことなのでは? 
『嫌われ松子』と比べていらっしゃいますが、リアリズムのレベル、批判のレベルにおいて、何も似ていないと私は思いました。確かに筋は似ています。しかし、作品をすべて筋に還元してしまうと、その作品の持つ肌触りや肌理や細部を見落とすことになってしまいます。それは、文学批評が長らく捕らわれてきた抽象性と同じだと思います。

投稿: fukuhara | 2006年12月19日 (火) 02時32分

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» 「最強伝説黒沢」 最終回 [トラッシュボックス]
マンガやアニメ等の評論が面白いので時々見ている、新田五郎さんのブログ で、『ビッグコミックオリジナル』に連載中だった、福本伸行『最強伝説黒沢』が最終回を迎えていたことを知った。 ホームレスに加勢して暴走族に立ち向かう展開になっていたのは知っていたが、どうも、唐突な最終回だったらしい。 しかも、 (以下ネタバレ) 黒沢は死ぬらしい。 そうか。そうなのか。 最近はマンガを読むことが減った�... [続きを読む]

受信: 2006年9月13日 (水) 22時46分

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