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【アニメ映画】・「桃太郎 海の神兵」

監督:瀬尾光世、1945年
太平洋戦争末期に製作された日本初の長編アニメ。
一時田舎に帰ってきた兵隊の犬、サル、キジ。動物の子供たち相手に武勇伝などを語って聞かせてくつろぐが、実はそれは鬼ヶ島侵攻最終作戦の直前であった。

検索してみたら、「のどかな動物たちの風景が出てくるだけに戦時中の狂気を感じる」とか「あくまで戦意高揚映画として効果をあげていることは忘れてはならない」といった意見が真っ先に目に入ったが、それはちょっとどうかな、というのが私見。

まず「狂気を感じる」という視点だが、まあ戦時中につくったらだいたいこうなるんじゃないの、くらいの感想しかなかった。でもまあこれは、北朝鮮アニメで実際に動物たちが戦って死んでいくようなアニメを見てしまったからかな。
戦死者の埋葬シーンは海軍関係者の指摘で削除されてしまったそうだけど、北朝鮮だったらそういうの、むしろ入れるでしょう。国民性の違いはあるにしろ、「埋葬シーンを隠蔽する」ということに関しては、自分は狂気よりも理性を感じてしまうんだよね。その理性が正しいかどうかは別にして。

軍オタが喜ぶような、軍事のシーンがリアルだということもおもしろおかしくネタ的に書いてあったHPもあったけど、戦意高揚を目的とするならそれはむしろ当然でしょう。田舎ののどかなシーンとの比較にしても、作画が非常に丁寧、ということでは共通しているから実は「描写」という面ではアンバランスではないんだよね。

ただ、ひとつ戦後から後出しジャンケン的に言うとすれば、南方の原住民(といっても、現地のサルや虎、ゾウたち)の描写、白人勢力からの解放を待ち望む動物たち、あれは「さすがにこれはねぇだろ」とは思いましたよ。
ただ手塚治虫が感動したシーンはあそこであり、レオによる動物たちの「啓蒙」がテーマのひとつであった「ジャングル大帝」にインスパイアされたシーンがあるらしい、というのは、戦争とはかけ離れていろんなことを考えずにはいられない。

本作の裏話的なことはネットをあされば出てくるんだろうけどとりあえず知らない状態で書くと、私は総合評価的にこのアニメはやはり戦意高揚映画としては破綻していると思うし、それがゆえに現在鑑賞にたえる作品になっていると思う。

プロットは、平和な故郷、平和な南方の島、そしてそれを侵略する白人勢力、そしてそれを攻撃してやっつける桃太郎、という戦意高揚としては申し分ない構成になっている。
しかし、個々のシーンのバランスはバラバラで、とにかく平和なシーンがあまりにもあまりにもあまりにも、多い。

実際に取材して描いたと思われる、軍の労働の描写などもじゅうぶんにリアルなのだろうけれど、それは軍オタやあくまでも戦後の視点であって、全編のトータル的な印象としては当時の子供が見ても戦意は高揚しなかったのではないか、と思う。

まあ、もしかしてそう思えるのは、私があまりにも戦争プロパガンダに長けている戦後のハリウッド映画を見過ぎてしまったからかもしれないですけどね。

出てくる動物が、ディズニー的な動きや「おじさんが子供を描くとき独特の気持ち悪い表情になる」ことを除けば、「日本的動物のかわいさ」は戦前から変わっていなかったのだなと思わせる。

また当然、動きなどは素人目に見ても相当すごい。

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