« 【映画】・「嫌われ松子の一生」 | トップページ | ・「昭和不老不死伝説 バンパイア」(4) 徳弘正也(2006、集英社) »

【映画】・「日本沈没」 監督:樋口真嗣

公式ページ

少なくとも30年以内に日本は沈没する!
来るべきカタストロフに備えて生きる日本人たちのドラマ。
(以下、ネタバレあり)

つくった人たちはまったく別人だとは思うが、「男たちの大和」に続き、日本でも普通のおとうさんもカップルも見に行ける大作映画がようやくできたな、という印象があった。

長期にわたる不況、またそれを払拭したかのようでいてまったくそうでないITバブル。そして「下流社会」という言葉が流行ったりといった「感覚的沈没感」とともに、マンションの耐震偽装問題などの「実際の地震災害への恐怖」が現状の日本人に蓄積している。
このため、「日本沈没」がこんにちリメイクされることにはそれなりの意義があった。

まあ政治情勢や地震対策のリアリティに関しては正直、私はわからんのですが、とにかくだれかが「感覚的沈没感」をフィクションの世界ですくい取る必要があったと思うのですよ。

総理の石坂浩二が役立たずだとか書いている人もいたけど、石坂浩二の最初の言葉、「どこにも脱出せずに日本にいたいという意見が多い」、このセリフが本作のプロットの意義そのものを表しているわけです。
「国土が無くなる」という感覚的な不安感に対応する場合、このように思う人は本当に少なくないでしょう。

私個人の印象では、本作は「普通の日本人のためのディザスター映画」という印象がすごくあるのです。
となると、当然横糸に恋バナも入ってきますわな。
ネットを散見すると批判者の多くが「草なぎ君と柴咲コウの恋愛が子供騙し」とか言ってる。
でも、この映画はたぶん子供もターゲットだからあれでいいんじゃないかなあ。
キャラ造形も、「家族を失ったために人を救おうとする柴咲コウ」と、「好きなことだけやってのらくら生きてきた草なぎ君」というふうに対照的に描かれているし。

とくに草なぎ君は戦後世代の象徴なわけでしょう。戦後世代の、インテリ層が「国土を守る」ということはどういうことかを体感していく、それはよく描けていたと思いますよ。
「戦争も修羅場も知らない青年」に日本を救わせたかったんだと思う(トヨエツや大地真央もそんなニュアンスなんでしょうね)。

決めつけになるかもしれないけど、「ローレライ」と続けて観て、樋口監督は日本の現状を見て「プラスの状態をよりプラスにする」気分ではなく、「マイナスになってしまったものをいかにゼロの地点まで、大人の責任で引き戻すか」ということをテーマにしているように感じた。
そういうふうに思っているのは樋口監督がたぶん最後の世代で、それより下は「マイナスの状態が当たり前」だと思ってる。
それはそれで世代の皮膚感覚だからいいけど、私はどこかでおっさんにがんばってほしいと思っているんで、樋口監督や福井晴敏の抱えているテーマというのは重要だと思ってます。

政治シミュレーションや市民の被害に関するリアリティにも批判があるけど、そんなものリアルにやりすぎたらぜんぜん楽しくない映画になってしまいますよ。
たぶん日本が沈没したら、大部分の日本人は難民化し、到着したアメリカにいじめられ、中国にいじめられ、韓国にいじめられ、北朝鮮にもいじめられるでしょう。そんなことを(この映画の場合)リアルに書いても仕方ない、と私は思う。やはり基本は娯楽映画なわけだから。

また、日本が完全に「沈没しなかった」件ですが、この映画は柴咲コウの義理の母親や飲み屋でバカばなしをしている「普通の人たち」がどう生きるかの映画だと思う。普通の人たちの大半は海外では日本と同じ生活水準では生きられません。
弱いけど懸命に生きている人々を描写して、そして彼ら全員が日本とともに沈んでいくのを描く、そこまでやってしまったらエンタテインメントではないでしょう。

その辺、旧作ではうまく誤魔化していたような記憶がありますが(見たけどよく覚えてない)樋口監督はそういう「足下の部分」を描こうとしたということだし、「男たちの大和」もそうでしたが、本作が「発言権のない名もない人たちのための映画」ということならば、ひとまずは正しい、と私は思いますけどね。

いかがなもんでしょうか。

|

« 【映画】・「嫌われ松子の一生」 | トップページ | ・「昭和不老不死伝説 バンパイア」(4) 徳弘正也(2006、集英社) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165886/11052357

この記事へのトラックバック一覧です: 【映画】・「日本沈没」 監督:樋口真嗣 :

« 【映画】・「嫌われ松子の一生」 | トップページ | ・「昭和不老不死伝説 バンパイア」(4) 徳弘正也(2006、集英社) »