« 【イベント】鶴岡法斎のエログロハイセンスVol7 | トップページ | ・「超古代の遺物 オーパーツの謎」監修:並木伸一郎(2005、竹書房) »

・「麻衣子!」(2) 早坂未紀(1985、東京三世社)

Maiko02

性懲りもなく80年代にひたりたい!というわけで、早坂未紀である。
麻衣子は、ごく普通の女子高生だがある日UFOに遭遇してから超能力を身に着けた。
それであーだこーだあるという1話完結もの。

調べたら全4巻らしい。1巻や2巻、あるいは「麻衣子MIX」なんかは古書店で入手できるかもしれないが、全4巻全部となるとプレミアが付いてしまうかもしれない。
「ヲタ漫画経験値(200人版)」でも知らない人がけっこう多かったので、もろもろ書いてみることにする。

早坂未紀は、80年代に活躍したマンガ家である(早坂未紀の世界が充実したファンページ)。
その後、引退して故郷に帰ったというがその消息はさだかではない。
一度、彼のサイトを見つけたことがあったが、検索しなおしたらもうわからなくなっていた。
いや、単に「マンガ家をやっていたことがあります」みたいなことが書いてあるだけのページだったの。

彼は80年代前半のロリコンブームの一翼を担っていた。「ロリコン白書」って彼の絵が表紙だったって初めて知ったよ。
ロリコンブームは、マンガにおけるSFやニューウェイヴのブームと重なっている。
この頃活躍して、その後パッとしなくなってしまった作家たちに関して「雰囲気だけでお話がつくれなかった」という批判もあるが、ニューウェイヴ自体が雰囲気重視だったから、それは「雨が降ったら天気が悪い」と言っているようなもんであるとも言える。

実際、早坂未紀はキッチリと伏線を貼ったお話をつくるのは苦手だったんじゃないかなあ。「麻衣子!」のシリーズと、あと短編をチョロチョロ読んだだけだとそう感じる。
「原作つければいいじゃん」という声もあるかもしれないが、彼の絵柄って、本当に80年代にしか存在し得なかった、しかも当時はしっかりとエッジを走っていた絵柄なんですよ。それが90年代以降も通用したかというと、むずかしかったかもしれない。

和田慎二、村上もとかのアシスタントだったというが、絵柄的には村上もとかに近いんですよ。
あと雰囲気的にはアニメの名作劇場とか、当時の少女マンガの影響も受けてるでしょう。80年代のロリコンブームでは、いくつか絵柄の系統があって岡崎京子などの少女マンガ系、70年代劇画あがりっぽい人、そしていのまたむつみとか平野俊弘とか、当時のアニメっぽい絵柄に影響を受けた人たちがいて、

早坂未紀はその中で無理矢理カテゴライズすると、劇画寄りなんだけど描線が非常にやわらか、という本当に当時のオタク業界でもっとも輝きを放つタイプの人だったと思う。

たとえば、系統はちょっと違うけどサンデーでやってたあおきてつおなんかは、現在でも活躍してますが、80年代では「美少女を描く人」という印象だった。
今でも女性が主人公の作品が多いけど「美少女マンガ家」ではなくなったわけで、現在、もし早坂未紀がいたらそういう存在になっていたかもしれない、とは思う。
案外、原作付きで料理とか法律うんちくのマンガを描いていたりしてね。

まあたらればの話をしてもしょうがない。どういうわけだか彼はマンガ家をやめてしまったのでまた過去の話をする。

「麻衣子!」に関しては、「超能力を持った美少女が日常と非日常を行き来して、いつも結末は日常に戻ってくる」という基本設定は、本当に80年代のお手本のような作品ですよ。
麻衣子が制服姿がデフォルト(少なくとも私の知る2巻までは)というのも懐かしい。吾妻ひでおの「ななこSOS」とかもドラマ「スケバン刑事」とかもそうだったし。今よりもずっと、制服を神聖視する傾向があった。

今の流行の制服って、そこまでの訴求力ってないですよね。思えばメイドだの何だのの制服が流行るのも、当時の「女子高生の制服」の威力が地に落ちてしまったから、というのはあると思うな。

まあ他の「マンガ奇想天外」とか「SFマンガ競作大全集」とか「レモンピープル」とか、あと徳間書店系のアンダーグラウンドなマンガを見ても似たような感想だとは思うんだが、とにかくなんかすごく感覚だけに訴えるような印象があった。
だからこそコアなSFファンの一部はマンガやアニメから離れたのだろうし、でもそういう「感覚にダイレクトに訴える」みたいなことが、けっきょくメディアを制していくというような流れがあるんじゃないかと思う。

いまだに「ゲーム脳」なんて言われるのもそのあたりが原因なんだろうし、
思えばヒッピームーヴメントなんて80年代にほとんど無かったけど、ドラッグやったことないからわからないけどそういう「陶酔する」ような文化、論理的にどうこうじゃなくて感覚のみに身をゆだねるような文化は、もしかしてしっかりと保持されてきたのかもしれないなあ、とふと思った。

早坂未紀が引退したことによって、80年代前半のロリコンブーム、あるいはアンダーグラウンドなマンガ文化の象徴的な存在に、一種なってしまった部分はある(いや今、その存在そのものを知らない人もいるとは思うけど、彼のリアルタイムの評価をひもとけば多くの人がそう思うんじゃないだろうか)。

ま、そんなこんなでいろんなことはぜんぶ終わってしまったね。それで自分のよく知らない人が、よく知らない場所で、よく知らない祭りを楽しんでるみたいな、そんな現実感覚ですよ私は。

「麻衣子MIX」感想

【参考】
早坂未紀の世界

|

« 【イベント】鶴岡法斎のエログロハイセンスVol7 | トップページ | ・「超古代の遺物 オーパーツの謎」監修:並木伸一郎(2005、竹書房) »

80年代」カテゴリの記事

マンガ単行本」カテゴリの記事

コメント

80年代的に言うなら、
早坂未紀の忘れてはいけない功績のひとつに、
「早坂みけ(三留まゆみ)を世に出した」ということがありますね。

投稿: 石川誠壱 | 2006年6月24日 (土) 05時58分

早坂みけって見留まゆみだったんですか!
なるほど〜。
あ〜もっと勉強しなければ。

投稿: 新田五郎 | 2006年6月24日 (土) 08時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165886/10647219

この記事へのトラックバック一覧です: ・「麻衣子!」(2) 早坂未紀(1985、東京三世社):

« 【イベント】鶴岡法斎のエログロハイセンスVol7 | トップページ | ・「超古代の遺物 オーパーツの謎」監修:並木伸一郎(2005、竹書房) »