【映画】聖獣学園

1974年、東映東京
監督:鈴木則文、原作:鈴木則文、沢田竜治
脚本:掛札昌裕、鈴木則文
「女が女で無くなるところ」だと自ら評する修道院へ入っていく多岐川魔矢(多岐川裕美)。彼女にはある目的があった。
……以前、オタクな友人がこの作品を見て「非常にガッカリした」とこきおろしていたのが印象的で、長らく観ていなかった。
しかし、どうもそのこきおろした理由は、「レズシーンがあんがい少なかった」とか「拷問シーンがあんがい少なかった」といった理由だったらしい。
薄いオタクである自分は、このテの妙な決めつけにずいぶん振り回されてきた。
若い人に警告するとすれば、「オタクがベタ褒めするものはまず観てみろ、オタクが酷評するものもまず観てみろ」といったところだろうか。
一般的にオタクと言われている人の大半は独自のこだわりを持ち、なおかつ語りたがりだが、その語りがきちんとこちらに通じるたぐいのものかどうかの保証など何もない。
みんながみんな、ソレができるのなら全員評論家かなんかになってるからね。
さて、本作。カルトムービー化してはいるが、鈴木則文監督の作品としてはまあまあの部類なのではないかと思う。
謎解きや因縁話を中途半端に複雑にして、中ダレがあるのだ。
それ意外の部分に関しては、悪役である神父(渡辺文雄)の「原爆の落ちたナガサキにも、アウシュビッツにも神は現れなかった」というセリフに象徴されるような、言いしれぬ、カタチを持った抑圧的なものに対するルサンチマン、復讐心が感じられるプロットが印象的である。
いわば本作では「修道院」とは「正しい偽善」とでもいったものの象徴であり、それをブチ壊すのが多岐川魔矢なのだ(クリスチャンの人は観たら怒っちゃうかもしれないが)。
なお、このテのアクションあり、お色気ありの東映映画のことを「東映ピンキー路線」というらしい。
おそらく長年(「映画秘宝」とかが出てくる前は)トラッシュ扱いになっていた作品群だと思うが、その中でもとくに本作のみ国内でDVD化しているのは、単に多岐川裕美のオールヌードがおがめるというだけのことからだと思われる(海外では、あまりにヒドイ修道院の描き方からカルト化しているようだが)。
さらに書きたいことがある。
以前、たまたま夕方の番組「レディス4」を観ていたらゲストが多岐川裕美だった。しかも「多岐川裕美が新人時代を振り返る」といったテーマで、東映の撮影所を訪れて「懐かしいわ〜」などと言う番組だったのだが、ここで彼女は、
「デビュー作で本当に大事にしていただいて、(ヘアメイクさんかだれか忘れたが)お母さんみたいな人がいて、その人と仲良くなって……」とか、
「デビュー作はたいへんで、もう二度と映画に出るのはやめよう、と思ったが終わったらまた出たくなっていた」などと言っていた。
それってもしかしてこの「聖獣学園」のことか!?
この映画の多岐川裕美ははっきり言ってヨゴレである。だからまあ、それらのコメントはその後も世話になった東映スタッフに対するリップサービスかとも思ったのだが、
ネットで調べたら彼女は海外DVDのインタビューにも出ているそうで、本作に関しては自分の作品であるという意識は強いようである。
多岐川裕美、エライよ。一服の清涼剤だ。
ところで、本作での彼女は確かにセリフは棒読みだが、不良の役で長ゼリフもそれほどなく、人が言うほど私は気にならなかった。
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