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・「失踪日記」吾妻ひでお(2005、イースト・プレス)

sittsou

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マンガ家・吾妻ひでおの失踪ホームレス時代、ガテン系仕事時代、アル中時代などを描いたドキュメンタリー(?)マンガ。

かなり前に読んだけど、感想書かないでうっちゃっていました。
なぜかっていうと、巻末のとり・みきとの対談でレビューに必要なことは言われちゃっているから。

あえてもう一度繰り返すと、生々しい、ドロドロとした不幸話を、ちゃんと自分の作法でマンガとして笑いに昇華しているところがすごい、っていうこと。
あんまりカラッと笑いにしてあるから、「裏凄み」というべきものが見えてくる。ここで切り捨てられていることの恐さが、何となく見えてくるんですよ。
でもそれはあくまでも「裏」であって、表向きは「笑いをとる」ということに照準が絞られている。
まあ、吾妻ひでおほどの才能のある人だから、「戻ろうと思えばいつでも戻れる場所」がある、という部分もあるかもしれないけど、そういうことを覗いてもこれだけシビアなことを、ギャグにしようとする姿勢はすごいなあと思う。

実はかなり前に読む、そのさらに前に、買っておいて積ん読の期間が長かった作品でもあった(ここから先は私の自分語り含む)。
というのは、作者が放浪生活を送ったことがあるというのはもう十数年前から知っていたし、なんかの単行本に収録された話でもアル中だったことは知っていた。

ガス配管工の仕事をしていたことも、いしかわじゅんのエッセイなどで知ってた。
だから、本作が売れて、話題になったと知ったときに、私自身は「吾妻ひでおは失踪してた!」ということはスキャンダラスな売りにはならなかった。
それに、吾妻ひでおは実話マンガよりもSFギャグマンガ家として評価されることの方が大切だ、いやそれよりも失踪するしないとか言っていた頃になんで吾妻ひでおが若い世代のマンガファン(具体的には現在二十代後半くらい?)に忘れられかけているんだ、という憤りがあったので、何か手にとるのが悔しかったということは正直、あったりした。

そもそもが、吾妻ひでおの代表作というとアニメ化された「ななこSOS」か、星雲賞を受賞した「不条理日記」ということになるんだろうけど、
前者は作者が「アイディアよりもキャラ先行で乗り切ろうとした」というようなことを言っていた作品、
後者は内輪ノリの濃厚な作品で吾妻ひでお初心者にはとっつきづらい。

そういう、ある意味一般的でない世評が定着しつつあった上での「失踪日記」だったから、
「なんだ、またSFギャグマンガじゃないのか!」と思ってしまったのだった。

しかし、本作はマンガ家・吾妻ひでおのスタンスをみる上で非常に興味深い作品であることは間違いない。
なぜなら、彼流のSF的な変な人物、宇宙人と、彼が失踪時代、配管工時代、アル中時代に出会ったいかがわしい人々、変な人々がほぼ等価に描かれているからだ。

これはSFマンガ家としての吾妻ひでおの想像力、逆に実話マンガ家としての彼の、実話の制御力とでも言ったものがそれぞれの作品で発揮されているからで、そこに吾妻ひでおの自作に対するポリシーを読みとることができるのだ。

これを機会に、もう一度かつての吾妻ひでおがマンガにもたらしたものは何だったのかを考えてみたい気分にさせられた。

(関連エントリ)
うーむ日記

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