【書籍】・「ブレードランナーの未来世紀」町山智浩(2006、洋泉社)
「『映画の見方』がわかる本 80年代アメリカ映画 カルトムービー編」とサブタイトルにあるように、主に80年代に公開された映画を扱っている。
取り上げているのは「ビデオドローム」、「グレムリン」、「ターミネーター」、「未来世紀ブラジル」、「プラトーン」、「ブルーベルベット」、「ロボコップ」、「ブレードランナー」。
面白いのは、冒頭に1946年の映画「素晴らしき哉、人生!」[amazon]について語られていること。
今回取り上げた作品の中には、ハートウォーミングな名作と言われる「素晴らしき哉、人生!」の影響を受けているものが多いという。
まあ、実は私は「素晴らしき哉、人生!」は、あまりにあまったるすぎるので途中で見るのをやめていて、結末を知らないんだけどね……。
本書の「はじめに」には、以下のようなことが書いてある。
「素晴らしき哉、人生!」は、まずアメリカの理想を描いている。
そしてその中で、「小さな町の人々を支えていた主人公が死んでしまった世界」をも可能性のひとつとして描いている。
その後の80年代の映画のいくつかは、この「理想のアメリカ」と「悪夢」とを同時に描いている。
で、1冊読み通して私が思ったのは以下のようなこと。
ここで取り上げられている映画の多くは、「ポストモダン」状況を描いていた。
それは過去→現在→未来と一直線の時間軸で進む、すなわちその時間軸にそって、それにふさわしい人間に成長すれば良い、という理想がうち砕かれた後の世界である。
簡単に言えば、何が正しくて何が間違っているのかわからない世界。
未来が約束されない世界。
敗れるべき理想すらない世界、である。
だから、「素晴らしき哉、人生!」における「理想の世界」と「悪夢の世界」、双方が同時に描かれるような混乱を呈する。
この辺には興味があるので、とくに面白かったのは「ビデオドローム」と「ブレードランナー」のくだりだった。
(次いで意外にアナーキーだった「グレムリン」の出自について。)
とくに、最後に載っていた「ブレードランナー」で作者の町山氏が読み解いたことは、現状に直結することであるように思う。
ここでは「引きこもっているより、自分がニセモノか本物かなんて考えずに精一杯生きたレプリカントの方がいい」と書いてある。
が、ポストモダン的な物語の最大の問題は、そこで「その精一杯生きた」部分さえ、果たしてアリなのかナシなのかという疑問が生じてくるということだろう。
そこへ本書では「プラトーン」を持ってきて、「肉体」とか「死」を突きつけることによってギリギリの「リアル」を浮かび上がらせようとする。
この手法(「肉体」とか「死」のリアリティによってポストモダン的グダグダを異化する)は、すでに80年代終わりか90年代に入ってすぐの別冊宝島でよく見られた主張である。
もしかしたら、それらを編集していたのは町山氏だったのかも。
日本のオタク状況でここまでの骨太さがあまり見られないのは、
もしかして戦争が遠いのとセックスをより遠ざけるかのようなふるまい=萌え、のせいかもとも思うけど、
それはまた別の話。
違うかもしんないし。
ひとつだけ欲を言えば、「素晴らしき哉、人生!」でまとめるならぜひとも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を入れてほしかった。
が、同作はカルト映画ではないので、続編が出たら載るらしい。
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